生憎の雨だった。
せっかく満開だった桜が雨に流されるような。
傘に当たる雨音。
風に流される桜の花びら。
見上げても傘で遮られる風景
下を見れば桜の絨毯が雨に濡れている。
フランソワーズは地面の桜を睨みながら歩く。
フランスに帰りたいと言ったら、博士はまだ危険だからここにいた方がいいと言う。
他のみんなは帰ったのに何故私だけ?
兄さんはいつでも帰ってきていいって言ってくれているのに。
ここは私のいる所じゃないわ。
早くあの頃の…人間だった頃の生活を取り戻したいだけなのよ!
普通の生活をしたいだけなのに…
何故私だけ…
気持ちだけが焦っていた。
前に進む事も出来ず戻る事も出来ないもどかしさに苛立っていた。
傘に隠れて涙を流す。
突然傘に人が入ってきた
「!!」
「よかった、家まで入れてくれる?」
「ジョー?」
雨に濡れた髪が彼の精悍な顔を少し優しくさせていた。
「突然降ってくるんだもん。よかった、キミがいて」
ジョーはフランソワーズが持っていた傘をひょいっと取り上げる。
急に傘が高い位置に来た。
「キミの言いたい事もわかっているし、博士も充分理解していると思う」
突然話始めるジョーにしばらく瞬きもせず聞いていた。
「他のみんなは故郷に帰ったのに、何故自分だけ帰れないのかって博士に食いついたらしいね」
「食いついたって…意見しただけよ」
「まだ僕らは狙われている。他のみんなは自分の身は自分で守れるから、キミはお兄さんも危険になるからもう少し待った方がいいと思うよ」
「じゃあ、いつまでここにいたらいいの?」
「日本も悪くないと思うけどなぁ〜これから桜が散ったら新緑の季節になるんだ。あ、そうだ」
ジョーが突然立ち止まる。
「今度晴れたらドライブ行こうか?いい景色知ってるんだ、日本もいいときっと思ってくれるはず」
「何故あなたは私を引き止めるの?」
「そうだな…近くにいれば守る事が出来るから」
「…それだけ?」
「さあ、どうでしょう?」
ジョーは意味あり気に笑う。
彼の本心がいまいちわからない。
私の事を心配してくれるのは仲間だから?
それとも…
「あ、晴れてきた!」
ジョーはそう言うと傘をフランソワーズに返し飛び出した。
走って行くジョーの後ろ姿に、桜の花びらが舞っていた。
つづきを閉じる