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フランソワーズはリビングで本を読んでいた。
気にならないと言えば嘘になるが、会って何を言ったらいいのかわからない。
私の気持ちは彼に伝わってしまったんだし…。
正直イワンの空気の読まなさには呆れている。
これじゃあ2人気まずいままよね…。
本の内容なんて頭には入らなかった。
リビングのドアが開き、誰かが入ってきた。
アルベルトだと思い、本に目を落としながら「ありがとう、ジョーの様子はどうだった?」と言いながら顔を上げると…。
そこにはジョーが立っていた。
「え?どうしたの?起きてもいいの?」
フランソワーズは驚きでパニックになっていた。
ジョーはふっと笑いながら近づく。
「もう必要以上に寝たからね、今日は天気がいいみたいだね、ドライブにでも行かない?」
「ジョー?体は大丈夫なの???」
「ボクを誰だと思ってるのさ、さ、行こう」
動揺しているフランソワーズの手をとり、外に連れ出す。
夏が終わりすっかり秋の空気になっている。
天気はいいがオープンカーでは少し肌寒いくらいだ。
「いつから外に出なかったんだろう…気持ちいいな~。」
ハンドルを握りながら、嬉しそうに目を細めるジョーを、ドキドキしながら眺めていた。
車から降り、湖がある公園にたどり着く。
ジョーから離れて歩いていたフランソワーズだったが、ジョーがゆっくり歩幅を合わせて、いつの間にか並んで歩きだす。
「平和だね…」
ジョーがいう「平和」という言葉はとても重く感じられた。
「この平穏な時間を守りたいために戦ってきたような気がするよ。」
フランソワーズは言葉にならず俯く。
「戦いで明け暮れていて荒みそうになった心を正してくれる存在があったから、ボクは頑張ってこれたんだと思う。」
「正してくれる存在?」
フランソワーズがジョーを見上げる。
急にジョーがフランソワーズに向かい、頭を下げる。
「ありがとう!!」
大声で言われ、何の事やらわからないフランソワーズはさらに動揺する。
「ちょっと、ジョー!どうしたのよ!!」
頭を上げたジョーは、笑っている。
何故かフランソワーズはドキドキしていた。
「君の存在があったからボクは平和を信じて戦えた…。」
「え…?」
無意識に涙が溢れている。
「…泣くなよ。」
「だってあなたの気持ちがわからなくて不安で…。」
ふっとジョーはフランソワーズを抱き締める。
「君には沢山辛い思いさせちゃったね…。ごめん、ボクは気持ちを言葉にするのが苦手なんだ。」
涙が止まらない。
ジョーは空を仰ぐ。
あの向こうで命がけで戦った。
この平穏な時間を守りたかったから…そして…。
「あの空の向こうで…」
ジョーの胸に顔を埋めていたフランソワーズ。胸に響く声が心地よく、目を閉じた。
「死を覚悟した時、たったひとつ後悔をしたんだ。」
その言葉にフランソワーズは顔を上げる。
「後悔?」
「君の笑顔をもっと見ていたかった…ってね。」
「ジョー…。」
流れる涙を優しく指で拭くと、顎に手をかけた。
「愛してるよ、フランソワーズ。」
涙でぐちゃぐちゃになっているフランソワーズに、そっとキスをする。
これを幸せと言わないなら、何が幸せなんだろう。
お互いそんなことを考えながらキスを交わす。
~おしまい~
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