after computopia (3)
「また眠ってしまったようだよ」
眠っているイワンをフランソワーズに手渡す。
「ちょっと出掛けてくる」
フランソワーズに軽くキスをし、その場を離れるジョー。
立ち去った後を、ジェット、アルベルト、張々湖、フランソワーズで追いかける。
「あんな009初めて見たな」
ジェットが笑いを堪えながら言う。
「普段は『僕たちは別に』なんて澄ましているのにな」
アルベルトもニヤリとしている。
「フランソワーズもまんざらじゃないんじゃないか?」
ジェットが言えば
「聞こえるアルよ!!」と張々湖が制す。
フランソワーズには積極的ななジョーの変貌に心当たりがあった。
あれはジョーじゃない。ジョーソックリなクローンロボット。
ジョーはきっとどこかに捕らえられているんだわ。
でもクローンロボットは性格までソックリになるはずだけど…。
スフィンクスの中央制御室には、ピュンマとグレートとジェロニモが向かった。
グレートが研究員に変装し、中に浸入、ロックを解除すると、ジェロニモが大暴れし、ピュンマはコンピューターのハッキングを始める。
カツーンカツーン…。
…来たな!!
イワンが言った30分。少し前に来るだろうと読んでいた。
ドアが開く。
相変わらず自分だ。
気味が悪い。
「さて、そろそろお前には死んでもらおう」
「何故捕まえた時に殺さない?」
「それじゃあ面白くないだろ?お前には絶望してから死んでもらわなければならないからな」
吐き気がする。
目の前の自分が嘲笑ってこっちを見ている。
「死ね!!」
銃口を向けられた瞬間、スイッチが入り、加速状態になった。
解けたぞ!!
でも喜ぶのはまだ早い、相手は自分のクローンだ。
力は…互角だ。
相手も加速する。
銃を持っているだけ向こうが有利だ。
右足と右腕に銃弾を受け、再び動けなくなった。
もうだめか…。そう思った瞬間。
「ジョー!!」フランソワーズが走ってきた。
「撃たれたの?大丈夫?」
「これくらい平気だ、それよりアイツを何とかしないと!!」
「フランソワーズ!!」
ジョーのクローンは、フランソワーズの姿を見つけると、活字に出来ない程の愛の言葉を叫び出す。
「やめてくれ!!」ジョーが耳を塞ぐ
「ボクの顔でそんな言葉を言うな!!恥ずかしすぎるだろ!!」
戦っていたメンバーが一斉に吹き出す。
「そうだな、ジョーはこうでなきゃ」ジェットが笑う。
あぁもう、誰かボクを失神させてくれ…。
ジョーが悶絶寸前のまさにその時。
ヒュン!!という音と同時に、クローンジョーが静かになる。
「お、ピュンマ、やったな」
どうやらプログラミングのシステムダウンに成功したらしい。
「ジョー、悪いな」
と言いながら、アルベルトがクローンジョーにミサイルを放つ。
「きゃっ!!」フランソワーズが叫ぶ。
ジョーは使える左手でフランソワーズを抱き締めると「大丈夫、ここにいるから」と耳元で呟く。
そしてそのまま意識を手放した…。
気がつくと、ドルフィン号のメディカルルームにいた。
手足を撃ち抜かれ、出血が酷く、気を失ったらしい。
失うならもっと早く…。ジョーは思い出し赤面する。
「あら、気がついた?」
フランソワーズがベッドサイドに腰を下ろす。
「酷い目にあったな…」
やっぱり悪い予感がしたらやめておけばよかった。
でも…?
逃げていてもカールエッカーマンはボク達の元に現れただろう。
「…ごめんなさい。気乗りしなかったのに…こんな目にあっちゃって」
フランソワーズがジョーの髪を優しく撫でる。
まだ麻酔から覚めたばかりのジョーのぼんやりした両目が見つめている。
「どの道カールエッカーマンとの戦いは避けられなかったよ」
「でも…」
「でも?」
「積極的で情熱的だったあなたもなかなかよかったわよ」
フランソワーズがにっこり笑う。
「な!!」
思わず起き上がりそうになるが、まだ傷が治ってなく、顔をしかめる。
「まだ寝てなきゃ」
フランソワーズが優しく寝かす。
「あれはボクであってボクじゃないんだ!!中身はカールエッカーマンなんだから!!」
「でもそれだけじゃないみたいよ」
「は?」
「クローンロボットは性格までソックリになるのよ、私の時もそうだったから。カールの心も入ってはいたけれど、土台はあなたの性格なのよ。」
あああああ…。
心の中で頭を抱える。
「あなたはいつも人前では私に触ろうともしないけれど、本心は活字に出来ない程の愛の言葉を囁きたいのよ」
「マジかよ…」
自分に隠された本能を向い合わせで見てしまい、混乱するジョー。
「もう少し休んだ方がいいわ。目覚める頃、日本に到着しているから。」
フランソワーズがメディカルルームを後にしようと後ろを向いた。
「フランソワーズ」
「え?」
ジョーに呼ばれ振り向く。
「ボクにはキミしかいない…愛している…。」
…。
きょとんとしているフランソワーズ。
「あなた…誰?」
(完)
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