「そろそろ選手交代かな」
ピュンマが後ろを指差し立ち上がる。
「耳が聞こえすぎるのも何だね」
ピュンマの様子からも今の話をフランソワーズは全部聞いていた事を知る。
「とにかく彼女にちゃんと自分の気持ちを話す事だね、そうしないとこの家の住人全員敵に回す事になる」
ピュンマは白い歯を見せ
「みんな彼女に甘いからさ」
と笑う。
ピュンマはテラスを出て、ジョーに聞こえるようにフランソワーズに「お待たせしました」と告げるとその場を離れた。
フランソワーズがテラスに出る。
「ごめんなさい。ピュンマは何も悪くないの」
ジョーの後ろに立ち止まるフランソワーズに、ジョーは座ったまま、身体を後ろにひねりフランソワーズを見る。
「わかっているよ」
ジョーはフランソワーズに座るように促す。
フランソワーズはためらいながら、テラスに直接腰を下ろす。
2人並んで海をみる。
久しぶりの近い距離にフランソワーズは落ちつかない。
「あなたに…避けられていると思っていたの…私がそばにいたら迷惑なのかと」
ジョーはフランソワーズを見ることなく海を見ていた。
「優しくされるのが嫌だったら…冷たくするから…だから…ここにいて欲しい」
ジョーはくすっと笑う。
「キミは冷たくなんてできないでしょ?いいよ、もうしばらくは出ていかない。またキミが突然いなくなったらすぐに探せなくなるからさ」
「ジョー…」
照れ隠しなのはわかっている。
コズミ博士の家を訪ねてきた時の彼の顔を思い出す。
心配してくれていた。
嫌っているとしたら…あんな顔はしない。
フランソワーズは深呼吸をする。
心臓の音が高鳴るのが自分でもわかる。
ピュンマとジョーの話を盗み聞きするつもりはなかったが、朝の2人の様子から気になってつい聞いてしまった。
彼の本心が。
自分を避けていた理由が。
もう苦しまなくてもいい
私はあなたを悲しませない。
「ジョー、私…あなたの事が…」
次の瞬間
トン…
「え?」
ジョーの髪が触れ、肩に重みを感じた。
「え??」
彼の匂いとお日様の匂い。
フランソワーズの肩を借り眠っているジョー。
安心しきった寝顔に微笑むと、肩を貸したままそのままで海を見た。
春はもうそこまできていた。
〜おしまい〜
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