あれから2週間…。
他の女子研究員達は、ジョーの話をしなくなった。
みんな仕事に慣れ始めていた。
そんなある日の朝
フロアのドアが勢いよく開く。
「お久しぶりです!」
女子研究員達かその姿を見つけ集まってくる。
「島村さん、帰ってきた〜!」
その輪から少し離れた所で、美香は胸をなでおろす。
よかった…元気そうで。
ジョーは輪から抜け出し美香の元へ。
「佐伯さん、久しぶり!その後フィリップとはどう?」
「あの夜はご馳走様でした。翌日からいなくなるなら一言くらい言ってくれても…」
「ごめん、ごめん。」
全く悪びれた様子などない。
「フランソワーズさんも一緒に行かれていたんですか?」
「何故?」
「フィリップさん、ずっと元気なくて…心ここにあらず…って感じでした」
「ふーん、あ、ちょっと時間ある?」
ジョーは美香を屋上へ連れ出す。
「きみたちの距離が少しでも近づいているかと期待して来たのになぁ」
ジョーは残念そうな顔をする。
「フィリップさんの頭の中にはフランソワーズさんの事しかないんです。島村さんがはっきりしてくれないから、フィリップさんは諦めきれないんです」
「フィリップがきみを助手にしたいって言ったそうじゃないか」
「何故それを?」
「所長が言ってた。フィリップからお願いされたって」
「仕事上のパートナーとしか思っていないんです。私はそれだけの存在なんです」
美香が屋上のフェンスをぎゅっと掴む。
その手をじっと見ていたジョーが口を開く。
「きみはフィリップに憧れてこの研究所に来たんだよね?」
「もちろんです!」
「じゃあ願いが叶ったんじゃない?それだけの存在でいいんでしょ?」
ジョーは意地悪く言う。
美香は言葉を失くす。
「きみは意地を張っているだけなんだ。本当はフィリップの事が好きなのにさ、フィリップが佐伯さんの方を向かないのを僕のせいにしたいんだろうけど、キミだって、フィリップの心を動かす努力はしたの?」
美香は黙ったまま。
「例えばだよ、僕がはっきり言ったとする。それでもしフィリップがフランソワーズの気持ちを断ち切ったとしても、じゃあ近くにいるきみに…って事にはならないと思うよ」
美香が顔を上げる。
「フィリップにも選ぶ権利はあるし、心がある。彼の心を動かせるように佐伯さんは努力しなきゃいけないと思う」
返す言葉もなく、ただ黙ったままジョーを見るしか出来ない美香に
「僕も出来るだけ協力するけど、佐伯さん自身素直になってフィリップに本心をさらけ出せるようにならなきゃね」
ジョーはくるりと背中を向けた
「また女の子達が騒ぐ前に…退散します」
振り向きニコっと笑い屋上を後にした。
美香は今ジョーが言っていた言葉を頭で繰り返す。
見上げた空は雲ひとつない青空だった。
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