気がついたら夜中だった。
何もする気が起きず、食事もロクに食べていない。
フランソワーズがいた日々は、この部屋も暖かい感じがしていたが、今はただ無機質な空間になっていた。
別々に暮らしていた頃には感じなかった孤独。
一緒に暮らしてしまったから、この部屋に彼女の思い出が出来てしまったから…
やはり
一緒に暮らすのは無理だったのかもしれない。
自分の気持ちを押し殺し、フランスに帰していたら…
こんな気持ちにはならなかったのに。
それもどこか身勝手で、そんな自分を嘲笑う。
彼女の幸せって…何なのだ?
イワンは言葉が足りないと言うけれど、僕の本心を伝えたら、彼女は不幸になるだけだ。
部屋のインターホンが鳴った。
…こんな時間に?
部屋に戻りモニターをチェックする。
モニターに映った顔に動揺する
「…フランソワーズ?」
フランスに帰ったんじゃ?
はっと我にかえる
「今、降りるから待ってて!」
「いいわよ、部屋にいて」
彼女の言葉に、エントランスのドアの鍵を解除する。
しばらくしてチャイムが鳴る。
ドアを開けた途端、フランソワーズが飛び込んできた。
「フランソワーズ…」
嬉しいのか何なのか、自分の中でも整理が出来ず、ただ飛び込んできたフランソワーズを抱きとめる事しかできない。
「あなたへの私の気持ちを全部語ってからフランスに帰る事にするわ、長くなるからなかなか帰る事が出来ないけれど」
あなたへの私の気持ち…?
そうだな、僕同様キミも自分の気持ちを話した事なかったよな…
お互いこれじゃ、イワンも心配する訳だ。
「おかえり…ごめん、キミを不安な気持ちにさせていた」
身体を離したフランソワーズをもう一度抱き締める。
彼女の暖かさに、涙が出そうになる。
彼女は笑って
「もういいわ、ここに来る前に解いてきたから」
と言う。
ほどく…って何を?
「解く?」
「あなたに対しての心の中にあったわだかまりよ」
わだかまり…
女王の事か?
「でも…まだ最後まで解いた訳ではないの」
フランソワーズは僕の耳元で
「最後はあなたに解いてもらいたいから…」
と囁いた。
お互いちゃんと向かいあって話をしよう。
自分達の心の中の物全て出してしまおう。
綺麗事はその後だ。
そう考えたらすっと楽になった。
フランソワーズが誤解している女王への気持ちも、きちんと話をすればわかってくれるだろう。
「…そっか」
抱き締めていた彼女をそっと離す。
「なかなか厄介なわだかまりみたいだから、朝までかかるかもしれないな」
「お手柔らかに」
彼女は笑う。
僕は、フランソワーズの肩を抱き、部屋に入る。
部屋のドアがぱたんと閉まった。
~おしまい~
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