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最高の舞台にしたかった。
やっと手に入れた主役。
休む間もなく練習した。
こんな日が来るなんて思わなかった。
もう…舞台には立てないと思っていた。
踊っている時は集中している。
あの時、座席の端にあなたを見つけるまでは…。
体制を崩しそうになる。
あなたが…ただ舞台を観に来ている訳ではない事位分かっている。
また…なのね。
とにかく今は彼を忘れて、最後まで踊りきらなければならない。
何とか舞台を終える。
沢山の花束を抱え、楽屋に戻る。
彼の姿はあれ以来見当たらない。
本当に舞台を観に来ただけなの?
私が彼を見間違う筈はない。
だって…。
メイクを落とし、着替えを済ます。
明日も公演があるから、千秋楽までは打ち上げもお預けだ。
みな明日に備え帰宅する。
大きなカバンを抱え、劇場の裏口から外に出る。
時々ファンが出待ちしている事もあるが、この劇場の裏口は目立たない所にあり、人目につかなかった。
そっと抜け出すように建物から外に出る。
無意識に彼を探している自分がいた。
離れてみてよく分かった彼への気持ち。
でも彼に会える時はいつも…
せっかく掴んだチャンスだ。
せめてこの公演が終わるまではそっとしておいて欲しい。
大きなカバンを担ぎ直し、2、3歩進みまた立ち止まる。
俯き、深呼吸を1回すると
振り返り
「ジョー、そこにいるのはわかってるのよ」
と呟いた。
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