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2人は近くのビストロに入る。
向かい合い、席に着く。
「久しぶり」
ジョーの笑顔に嘘はない。
「来てくれるなら連絡くれれば…レストランでも予約出来たのに」
「いいよ、これ位賑やかな方が」
ジョーは流暢なフランス語でオーダーをする。
シャンパンで乾杯する。
「キミの舞台の成功を祝って」
「まだ終わってないわ」
「素晴らしい舞台だったよ」
「…ありがとう」
いつか彼に観てもらいたかった。
思いがけず叶った夢。
でも…
「また…集まらなければならないのね…」
フランソワーズの言葉に、ジョーの手が止まる。
「…」
「…分かっているのよ」
俯いていたジョーがフランソワーズを見る。
「…本当は、こんな用事でキミに会いたくなかった。でも…時間がないんだ」
「いつ?」
「明日の便で発つ」
フランソワーズは大きな溜息をつく。
「まだ舞台は始まったばかりよ。
何故?何故いつもうまくいきそうになると…こうなの?」
「声だけはかけておこうと思っただけなんだ。ごめん、今大切な時期なのにこんな事を言って」
目の前の美味しいお料理も
目の前に座っている彼も
一瞬で色を失った。
ジョーはカバンを探ると、封筒をフランソワーズの前に差し出した。
「明日の便のチケット。一応渡しておくよ。」
ジョーは席を立つと、オーダーシートを手に取った。
「じゃあ、行くよ、ごめん…キミを苦しめる事しかできない…」
レジで会計を済ませ出て行った。
振り返る事もなく。
1人残されたフランソワーズはその場で顔を覆い、少しだけ泣いた。
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