ここの研究所は、全員が集まる広いフロアに机が並んだ部屋と、研究する為の個室がある。
いつどの時間にどこにいてもいいのだが、フィリップは事務仕事の時はフロアにいて、研究の時のみ個室を使う。
フロアには社員全員のデスクがあてがわれ、ジョーのデスクもある。
ジョーのデスクには見られていないメモや付箋が貼られている。
ここに用件のメモを置いておくと、他の女の子のお誘いと一緒に処分されるんだろうな…。
フィリップはジョーのデスクをぼんやり眺める。
だいたい島村さんはデスクにはいない、あの人事務仕事嫌いだし…
「あのぉ」
ジョーのデスクの前でブツブツ言っていた後ろから声を掛けられ慌てるフィリップ。
「何かお手伝い出来る事があればやります!」
美香嬢がなんなりと!とやる気満々に言う。
「今日はこれと言ってやってもらうような事は…じゃあこの書類に印鑑押しておいてもらえるかな?」
「はいっ!」
美香が嬉しそうにフィリップのデスクに座る。
押しが強いけど素直じゃないか。
フィリップも思わず笑顔になる。
「印鑑はどこにあるのですか?」
「引き出しの1番上…ちょっと待って」
フィリップが自分の机の1番上の引き出しを開ける。
印鑑を探して引き出しの中をゴソゴソしている時、美香がある物を見つける。
「どうして…まだ…」
「え?何か言った?」
フィリップは美香の言葉が聞き取れなかった。
「いえ、何にもありません」
「はい、印鑑、お願いします」
「…はい」
美香の様子が変わった事にフィリップは気づいてはいなかった。
PR