「遅くなっちゃった」
フランソワーズは必死に走る。
キッズクラスのバレエの発表会があり、
その後保護者を交えて懇親会を行なった。
途中で抜けようかと思っていたが、熱心な保護者達の話を聞いているうちに、終電ギリギリの時間になった。
「泊まっていけばいいじゃない」というバレエ学校校長の小松の誘いを断り、全速力で電車に飛び乗った。
最終電車は酔っ払ったサラリーマンや、カップルで溢れていた。
ドア脇に立ち、流れる家々の明かりを眺めていた。
彼は昨夜から研究室にこもっていたから、今日は家にいるはず。
連絡してみたが、返事がない。
どこかで落ち合って食事でもとも考えたが、研究室徹夜明けに出てきて、とも言いづらかった。
ようやく家に辿り着く。
明かりもなく真っ暗。
「誰もいないのかしら…」
時間はもうすぐ日付が変わろうとしているが、まだ起きていると思っていた。
ジョーの部屋をノックする。
返事がない
そっと開けてみる。
ベッドに人がいるのか見える。
「え?眠ってるの?」
そこにはスヤスヤと眠っているジョーの姿。
必死に帰ってきたフランソワーズはここで気が抜ける。
「言えなかったわ…」
「何が?」
寝ていたはずの人の目がぱちっと開き、フランソワーズは驚いて下がる。
「お、起きてたの?」
「今起きた。だってバタバタうるさいもん」
ジョーは上体を起こす。
「ごめんなさい…間に合わないかと思って必死で…」
「何が?」
「何…って、今日は誕生日じゃない」
「誰の?」
「え?…あなたの…」
「え?今日って何日?」
あまりにジョーが惚けるから、本当は今日ではないのだろうかと不安になりながら、フランソワーズは
「5月16日」
と告げる。
「そうか!今日が何日かもわからなかった!徹夜すると、日にちの感覚がなくなるから」
「ごめんなさい、ちゃんとお祝いできなくて…」
「ホントだ!残念だよ。キミの作ってくれるご馳走食べられなくて…だから」
「だから?」
「これからいただきます」
そう言いながら立ち上がり、ベッドサイドにいたフランソワーズを抱くとベッドに降ろす。
「ちょっと!待ってよ!」
慌てるフランソワーズなどおかまいなしに
「明日になっちゃうからさ」
そう言いながらキスをする。
「もう!お誕生日おめでとう位言わせてよ!」
「ありがと」
ジョーはニコっと笑うとフランソワーズの首筋に唇を落とした。
Joyeux anniversaire!!
2017.5.16
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