「ねぇ、私が産まれた日の事って覚えている?」
フランソワーズはキッチンでコーヒーを淹れているジャンに聞く
「覚えているさ、あの日は寒かった」
ジャンがフランソワーズの目の前にコーヒーを置き、向かい側に座る。
「産まれたばかりの私ってどうだった?」
「真っ赤な顔して泣き叫んでいてあ、弟が産まれたって思ったね」
「え…?」
ホントウは小さくて触った壊れそうな妹を恐る恐る抱かせてもらった事、その時何があっても妹を守るんだと心に誓った事…。
結局は守ることすら出来なかった。
「おにいちゃん?」
「あ…」
ホントウの事は…妹には言わない。
「またこうやってお前の誕生日に一緒に過ごせるとはな…」
「そうね…」
フランソワーズが「あ!」という顔をする。
それを合図にするかの様に、ジャンが立ち上がる。
「フランソワーズ!悪い!今日これから用事があったのを忘れていた!」
「え?せっかく…」
「ジョーによろしく言っておいてくれ」
「待って!今!」
ジャンはコートを羽織ると、部屋の扉を開ける。
ちょうどジョーがアパルトマンに着いたタイミング
「あ、義兄さん!どうしたんですか?」
「悪い!用事があったのを忘れていた!フランソワーズをよろしく!」
「義兄さん!」
ジョーの言葉を背中で受けて、振り向かず手を振った。
もう、俺が妹を守らなくてもいい
産まれた時の気持ちは今も変わらない
でもな…。
「なんだか父親みたいだな」
ジャンはふと発した独り言に笑った。
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