また翌年、いつもと同じ時期に桜が咲く。
夢が手に届きそうだったのに、チャンスを簡単に失った。
どんなに頑張っても、どんなに努力しても叶うことのない夢なのだと思い知らされる。
彼は私の夢を応援してくれていたから、私を呼び戻す事を躊躇っていたようだ。
でも事態は深刻で私の力がどうしても必要だと連絡をしてきた。
彼からの連絡は嬉しかったが、それは同時に夢を捨てる事だった。
久しぶりに再会した彼は、申し訳なさそうに言葉も少なかった。
まだ全員揃わないからちょっと時間があるんだと誘われた所は2年前一緒に歩いた桜並木。
ちょうど満開を迎え、ピンク一色となっていた。
「来年一緒に見ようと言ったけど、こんな形になってしまって…」
ジョーは申し訳なさそうに頭を下げる。
「あなたは何も悪くないわ…そうそう、これ」
フランソワーズは携帯をジョーに見せる。
去年撮影して送った桜の写真。
「この写真は私のお守りなの、パリで辛い事や悔しい事があった時、いつもこの画像に元気つけられていたわ」
桜の花言葉は「私を忘れないで」
「あなたは私を忘れないでいてくれている。応援してくれているから頑張らなきゃ…って」
フランソワーズはジョーの手を握る。
「ありがとう」
ジョーは周りの目を気にすることなくフランソワーズを抱き締めた。
側にいた人が「おーっ」と声を上げる。
「ち…ちょっと、ジョー?」
周りの反応に恥ずかしくなり、逃げようとするフランソワーズの行動を抑えるようにジョーはぎゅっと抱き締める。
「…何か…言ってよ」
何も言わずただ抱き締めているだけのジョーにフランソワーズは不安になる。
「キミを忘れる訳はない」
「ジョー?」
「キミの夢が叶うようにと応援していたけれど、やっぱり…キミに側にいて欲しい」
去年桜の画像を送った時の彼の気持ち。
ただ桜が咲いたという報告だけではなかったんだとフランソワーズは思う。
抱き締めたジョーの腕をそっと解く
「私はどこにも行っていないのよ、心はいつもあなたの側にいたから」
ジョーが顔を上げると、フランソワーズはにっこり微笑んで、桜を見上げる。
2人は手を繋ぎかながら桜並木をゆっくり歩き出した。
〜おしまい〜
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