まるで朝が来て目が覚めたようだった。
何日眠ったままだったのかわからない。
ジョーは目を開けると、メディカルルームのベッドから起き上がる。
メディカルルームのドアが開く。
フランソワーズが入ってきた。
「ジョー、目が覚めたのね」
ジョーはフランソワーズを抱き締め、軽くキスをする。
ふっと香った硝煙の匂いに、何かが終わった事を知る。
「ちょっと行きたい場所があるんだ」
突然のジョーの言葉に首を傾げるフランソワーズ。
「多分、キミが報告したい事に関係していると思うから」
ナツはジョーにある地図を残していた。
何故なのかはわからない。あの時はお互い無意識な状態だった。
その場所は、ジョーが無意識の中で見た桜の木がある所だった。
桜の花は舞い、風に吹かれ飛んでいく。
あの時と同じ光景にただ言葉をなくす。
「意識を失っている間、ここにいたんだ。」
「…あなたは、意識を失っている間、何を見ていたの?」
フランソワーズがジョーに近づく。
「ボクを刺した男に出会った。」
「ナツさんに?」
「名前は言わなかった。あぁ、ボクを刺した時Xと名乗った。彼も心だけこの空間に現れた。」
ジョーは空を見上げる。
桜の花の間から空が見えた。
あの時は真っ暗だったのに
ここは現実なんだと気づく。
「事故に遭い、サイボーグにされた。ボクを狙ったのは、博士に恨みがあるから、でも彼自身はオメガという科学者に操られているだけで、ボク等に何の恨みもないと」
フランソワーズの顔が曇ったのに気づいたが、そのまま話を続ける。
「結婚を約束していると言っていた。ボク達が何とかすると言ったら、現実の彼には記憶がないと…」
「ジョー…もう、終わったのよ…全部」
今にも泣き出しそうなフランソワーズと向かい合う。
「終わった…?」
「オメガ博士という科学者が、過去にギルモア博士に学会で理論を覆された。それに恨みを持っていて、私達より優れたサイボーグを作り、復讐の機会を狙っていた。
半年ほど前に交通事故に遭遇し、瀕死だったナツさんを連れ帰り、サイボーグにして、記憶を消し、操っていたの。ギルモア博士の目の前で全員を殺すのが目的だったみたい」
フランソワーズは涙を堪え話を続ける。
「ナツさんの恋人のミチさんがナツさんを探している時具合が悪くなって、私が声を拾ってしまったの。しばらくウチにいたわ、そこに丁度ナツさんが現れて…」
フランソワーズの目から涙がこぼれる。
「ミチさんがナツさんの記憶を取り戻すために必死に説得している時、オメガ博士がミチさんを撃ったの。ナツさんは記憶を取り戻したけれど、ミチさんは亡くなってしまった…怒ったナツさんはオメガ博士を…でもその瞬間」
「どう…したんだ?」
フランソワーズは溢れる涙を堪えきれず、震える声でやっと話す。
「ナツさんの身体には爆弾が仕掛けられていたの、恐らくオメガ博士に逆らうとスイッチが入るようになっていたみたい…」
「…じゃあ…」
「終わったの…みんな…終わったの」
「…そんな…そんな事って…」
ジョーの声も震えていた。
「なんで…こんな事になってしまったんだ!!何故彼らは死ななければならなかったんだ!!何故…助けられなかったんだ…」
ジョーはその場にうずくまる。
その肩は震えていた。
フランソワーズは、うずくまるジョーを優しく包み込むように抱きしめる。
ジョーは声を殺して泣いていた。
きっと彼も無意識な世界の中で、ナツと会話をしていたのだろう。
何も出来なかった後悔と無念さに涙しているのだろう。
2人はしばらく抱き合いながら泣いていた。
もう戻ることのない2人を想いながら。
そんな2人の頭上には桜の花びらが舞い落ちていた。
桜は散り際が美しい…
end
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