10
クリスマスイブの朝。
まだ辺りが暗い時間にジョーは目覚めた。
隣の恋人を起こさないように、静かにベッドから降りる。
窓の外を見ると、雪が積もっていた。
10センチ位だろうか。
寒い…。
自分にはそんな言葉すら忘れていたのに…。
人間らしくを常に聞いていたら、そんな気分になっていた。
明日パリを離れる。
フランソワーズはジャンの恋人と会話出来るようになったし、自分のミッションはコンプリートだろう。
折角パリに来ているのに、観光すらしていない。
観光で来ているわけでもないが…。
朝の日課のようにコーヒーを入れる。
ベッドで寝ている恋人が寝返りをうつ。
いないことに気付いたのか、目を覚ました。
眠そうに目を擦り、ベッドサイドの時計を見る。
「随分早起きね」
ジョーはベッドに腰掛けキスをする。
「昨日は早寝だったからね」
「まだどこも開いてないわよ」
「そうか…じゃあ」
ジョーはフランソワーズの隣に潜り込む。
「二度寝するか」
「…二度寝はダメよ!!折角早起きしたんだから…」
フランソワーズを抱き締めようとした瞬間返された。
「危ないだろ?」
「観光しましょう」
「は?」
何をいきなり?
「そういえば、ジョーにパリを案内していないわ。お土産話程度に案内するから」
土産話程度…ね。
二度寝を阻止され、渋々着替え、ホテルのラウンジで朝食を取り、寒い街に出掛けた。
「取り敢えずここ押さえておく?」
毎日ホテルの部屋から眺めていたエッフェル塔。
早い時間から動いたのがよかったのか、空いていた。
エレベーターで上まで行ってみる。
一面銀世界のパリが一望できる。
東京タワーもノスタルジックだが、エッフェル塔は街との調和が取れているように感じだ。
歴史ある建物が多いからだろう。
「ルーブル行かない?」
ルーブル美術館のピラミッドのライトは日本製のLEDだ。
日仏でひとつの作品みたいで…。
まるで僕らみたいだな…。
ジョーは携帯で写真を撮る。
「夜見たかった」
館内に入る。
「モナリザとミロのビーナスしか知らない」
ジョーが笑う。
ガイドツアーの後ろで作品を見る。
日本人が多くいる。
あちこちから日本語が聞こえる。
「パリってさ…」
ジョーが何かを言い出したので、フランソワーズが顔を見る。
「遠い所だと思っていた。」
フランソワーズは笑う。
「こんなに近くにいるじゃない」
ジョーの腕に腕を絡ませる。
「寒いけど、セーヌ川行ってみる?」
もう雪は降っていないが、なかなか雪が溶けない。
半分凍った道をザクザク歩く。
セーヌ川も凍っている箇所がある。
「いい季節なら…綺麗なんだけどね」
「ここで…」
ジョーが言葉を切る。
「…いや、なんにもない」
「何?言いかけたんだから言ってよ!!」
「男らしくないな…って思ったからやめとく」
…過去に誰かと来たことあるの?なんてさ…。
「へんなジョー!!」
とにかく寒いから、アパートに向かうことにした。
「今夜は鍋がぴったりね」
イブの夜、パリで鍋…。
ナポレオンもビックリだよ…。
ジョーはフランソワーズの手を握り歩き出す。
PR