横浜は青空が広がっている。
赤レンガ倉庫の前には、毎年恒例となったアイスリンクが設置されていた。
女子高生の団体が、きゃっきゃ言いながら滑っている。
横浜港をぼんやり眺める。
ベイブリッジが陽の光に輝いている。
広場には、ジョギングをする人、犬の散歩をしている人、観光客が写真を撮っている。
異国情緒溢れるこの街にいると、自分のビジュアルも目立たないような気がする。
ここなら…どんな国の人も受け入れてくれる様な…そんな気がした。
天気がいいからか、とても冷たく、鼻がツンとする。
ジョーはマフラーを鼻まで上げた。
「島村さん?」
声を掛けられ振り返る。
「どうしたの?独り?」
「島村さんこそ、仕事中じゃないんですか?」
「ねぇ、ちょっと時間ある?」
車窓から流れる景色を見ていた。
ゴーチェは留学時代の話や、公務で訪れた国々の話を面白おかしくしてくれる。
とても楽しい話なのに…。
何故気分が乗らないんだろう。
信号が赤に変わる。
みなとみらいは今日も賑わっている。
ふと目に付いた。
ジョー?
隣には若い女の子が。
楽しそうに話をしている。
久しぶりに見たような気がした。
同じ屋根の下に暮らしているのに…。
「フランソワーズ、気分でも悪いのかい?」
ゴーチェが心配する。
「いいえ、大丈夫です」
信号が青に変わり、2人の姿も遠ざかる。
「今日はありがとう、用事あったんじゃない?」
「暇つぶしでしたんで…でも島村さんに会えるなんてびっくりしました。」
女性は嬉しそうに笑う。
港が見渡せるオープンカフェ。
ジョーはコーヒー、女性はチョコレートパフェ。
「こういう所苦手でさ、付き合ってもらって良かったよ」
「喜んでくれるといいですね」
女性はクスッと笑いながら言う。
「そうだね…」
「それより君も仕事あるんじゃない?」
「暇つぶしって言いましたよね?実は会社辞めたんです」
「え?どうして?あんなにやりがいがある仕事だって…」
「結婚するんです。彼が…仕事辞めろと言うから…」
女性は結婚を目前とした様子にしては沈んだ顔をした。
彼女とは大学時代同じ研究室にいた。
大学出てすぐに会った時、やりがいのある仕事に就けたと話していた彼女の姿を思い出す。
「本当に…それでいいの?」
ジョーの言葉に女性はうつむきながらもしっかりと話す。
「…確かに、今の仕事はやりがいがあって楽しかった…でもこれからは、彼を支えるのが私の仕事…私にしか出来ない仕事です」
言葉を言い終え、顔を上げた彼女は笑っていた。
ジョーもホッとしたように
「結婚おめでとう」と笑顔で返す。
2人は駐車場まで並んで歩く。
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