誰かがドアを叩いている。
ベルも鳴らしている。
うるさい…まだ朝早いじゃないか?
「アルベルト‼︎」
フランソワーズの声だ。
「何だ…こんな朝早くから」
ドアを開けると、ジョーとフランソワーズが並んで立っていた。
「ジョー、戻ったのか…」
「アルベルト、ヒルダさんの写真ってある?」
フランソワーズが会話を遮断するかのように被せてきた。
「何があったんだ⁈」
「いいから‼︎」
フランソワーズが強く言うので、仕方なくアルバムを見せる。
ジョーとフランソワーズは同時に息を呑む。
「そっくりだ…」
「…ヒルダさんだわ、間違いない」
「ヒルダがどうした」アルベルトは意味がわからず、2人に問う。
「ミュンヘンの森の中で会った」
「私は夢で見たわ」
2人とも面識がないから、思い過ごし…という事ではないだろう。
「何か言ってたか?」
何故か2人して黙り込む。
お互い聞かれたくない事なのか?
「クリスマスシーズンだ。死人も現れてもおかしくはないだろうよ」
焦ることなくのんびりと、いつもの冷静なアルベルト。
「お前達、今日はクリスマスマーケットに行くんだろ?そんなことに振り回されてないで、楽しんでこい‼︎」
でも…と言いたげなフランソワーズとジョーの肩を叩くと、アパートから追い出した。
静かになったアパートの部屋。
いつ引っ越せてもいいように、必要最低限の物しか置いていない。
殺風景な部屋に一つだけ、色をつけた物があった。
クリスマスツリー。
「…お前…なのか⁈」
アルベルトはツリーに向かって呟いた。
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