ホテルに戻ったフランソワーズ。
チェックインを済ませ、部屋に向かう。
「お連れ様の荷物は先に置いておきました」
ベルボーイにチップを渡す。
ベルボーイがドアを閉めた瞬間、フーッと息を吐く。
ベッドに腰掛けると、目の前にはジョーのスーツケース。
ミュンヘンから帰って来るのだから、どんなに運転が上手いジョーでも明日の朝になるだろう。
随分長いこと会っていない様な気がした。
連絡だってひとことふたこと…。
すれ違いに慣れている自分に腹が立つ。
本当は寂しいのに…。
物分かりのいい振りをしているだけなのに…。
フランソワーズはベッドに顔を埋めた。
アルベルトは、クローゼットから、ある物を出した。
箱の中にはクリスマスツリー。
オーナメントは木製の物と、ストロースター。
年数が経っているので、麦も金色に輝いていた。
「楽しみにしていたもんな…」
アルベルトは缶ビールを飲み干すと、その場を離れた。
事故の後、長い入院生活を強いられた…とイワンの事後工作で、周りには怪しまれずに、この地に戻って来れた。
共通の友人が、引き払ったアパートの荷物を預かっていてくれた。
…クローゼットに入りきれる位な荷物だったが、それでも2人が生活していた思い出だった。
その中にツリーがあった。
毎年12月になると、クリスマスの支度を楽しそうにしていた。
最後に一緒にクリスマスを祝ったのはいつだったか…。
思い出せなくなっていた。
PR