マガジントリビュート版からの妄想作文。2回目です。
続きからどうぞ。

2.
家に戻ったのは日が暮れてからだった。
コズミ博士のお使いだった。
土地勘のある自分が選ばれた。
「行ってきました」
「ありがとう、悪かったな、君しか頼めなくて」
「いいんですよ、居候させてもらっているんだから、これくらい」
リビングに戻ると、フランソワーズと大人が夕飯の準備をしていた。
「ただいま」
「おかえりなさい」
まただ、目を合わせようとしない。
何故?
「お疲れ様でした、コーヒーでも飲む?」
結構な時間一緒にいるようだが、どうも彼女は距離を縮めてこない。
こんな得体のしれないネンショー上がりじゃあ親しくなる気もないって訳だ。
「あのさ、今日、昔の仲間にあったんだけど…」
大人が席を外したときに、そっと話しかける。
「え…?」
「俺が行方不明になってから、ある人が俺を探しに訪ねてきたって…」
フランソワーズは神妙な顔で、ジョーにコーヒーを持ってきた。
向かい合わせに腰を下ろす。
「君にはお兄さんがいるのか?」
固まった。
普段目を合わせない彼女が、じっと自分を見ていた。
透き通るような蒼。
こっちも固まりそうだった。
「どうして…それを…」
「お兄さんが君を探して日本にやってきたらしい。同時に行方不明になった俺の消息を訪ねに来た…と」
再び、目を合わせると、彼女の瞳には涙が流れていた。
女の涙はめんどくさいと思っていた。
でも、彼女の涙はとても綺麗だった。
近い距離なのに、慰めてやることも、抱きしめてやることも出来なかった。
彼女は自分とは釣り合わないことくらい、わかっているから…。
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