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distance 5

マガジントリビュート版からの妄想作文5話です。
続きからどうぞ。

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大学生のバックパッカー。
設定上はそんな感じだ。

リュックにパーカー、ジーンズにスニーカー。
ごく普通の旅行者の風貌だ。

探知機をくぐるとき、どうなるんだろう?と思ったが、屁理屈しか言わない赤ん坊が何とかしてくれているという。
自分で選んだ身体じゃないのに、いちいち不都合がある度にイラっとする。


飛行機に乗るのも、海外へ行くのも初めてだ。
…いや、自分の足で…だ。

長いフライトの末、パリにやってきた。

地図を持たされたが、大きな街に訳がわからない。
でも、言葉に苦労しなくなったのはよしとしよう。

ようやくフランソワーズが住んでいたというアパートに辿り着く。
深呼吸をし、中に入る。


チャイムを鳴らすと、男性が出てきた。
フランソワーズと同じ髪の色、瞳の色。
この辺では見かけない東洋人に戸惑っている。
「何か用ですか?」

「島村ジョーです。」
男の顔が強張った。

ジョーは部屋に通される。
リビングは整頓されている。
インテリアを見ると、フランソワーズらしい…と思った。
ここで幸せな生活をしていたんだろうな。
胸が痛む。

「君が…あの?」
「日本まで探しに来たそうですね、聞きました」

目の前の少年をジャンは見る。
少年院に入っているくらいだから、どんな凶暴な子供かと思っていた。
目の前の少年は、穏やかな普通の東洋人だ。

「妹さんから手紙を預かって来ました」
ジョーはリュックサックから手紙を出す。

「妹は…無事なのか?」

「はい、元気です。ただ今は逢えないからと、手紙を預かって来ました。」

ジャンはジョーから手紙を受け取る。
その場で封をあける。
フランス語で手紙が3枚。

「…失礼」
ジャンがその場を離れた。
涙を拭きに行ったのだろう。

一人残されたリビングに、時計の秒針の音が響く。
入れられた紅茶を一口飲む。
窓の外はテレビでよく見るパリの街並み。
ここで彼女は生活をしていた。
自分とは違い、何の不自由もなく。


ジャンが戻ってきて、ジョーの向かい側に座る。
「…で、君は、妹とどのような関係で?」

「一緒に誘拐され、一頃は同じ所に監禁されていました。今はそこから脱走して、ある所に他に誘拐された人々と一緒に暮らしています。
それ以上でも、それ以下でもないです。」

「今はまだ語れない…って訳なのか…?」

「そうですね、あなたも危険になる。」
妹からの手紙の内容で、何かが彼と彼女に降りかかっているのはわかった。
時期が来れば帰ります。とも書かれていた。

「用事が済んだので、失礼します」

あまり長居をするつもりはなかった。
息が苦しかった。
幸せだった家庭、彼女の苦悩、自分自身の気持ち…。
早くここから去りたかった。


「ちょっと待ってもらえますか?」
ジャンは、メモにすらすらと言葉を書いた。
「これを妹に渡してもらいませんか?」

「はい」

ジョーはフランスを後にした。
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