6
日本に到着する時間は連絡していた。
電話に出たのはコズミ博士だったし、まさか空港にフランソワーズが来ているとは思わなかった。
「おかえりなさい、ありがとう」
おかえりなさい。そんな言葉も言われた事がないから戸惑う。
フランソワーズの為にフランスに行ったのだから当たり前か…とも思う。
空港の駐車場で車に乗る。
いつ切り出そうかと思いながらも、家の近くの海岸道路に来てしまう。
海が見える駐車帯に車を止める。
「?」
助手席のフランソワーズはどうしたのかとこっちを見ている。
「ちょっと話をしていい?」
家に帰ってからでもいいかと思ったが、2人きりで話がしたかった。
「…兄は何て…」
「待っていると言っていたよ」
車から一旦降り、トランクからリュックを出すと運転席に戻る。
フランソワーズはすでに泣いていた。
「これ、お兄さんから預かった」
ジョーが帰るといった時に、さっと走り書きをしたメモを渡す。
静かに文面を追う。
肩が震えている。
肩を抱いてあげたかったが、そんな事を自分はできないと思っていた。
こんな状態で家に帰れないだろう。
しばらく車を止めたまま、ハンドルに腕を置き、身体を預けるようにして目の前の海を眺めていた。
「…いつか、君がフランスに帰れるように…お兄さんとまた一緒に暮らせるように…そんな日々を作れるように頑張んないとね」
しばらく無言でいたジョーがぽつりとつぶやく。
「…ありがとう」
フランソワーズはジョーの方を向く。
ジョーはドキッとする。
じっと自分を見つめているフランソワーズの蒼い瞳がとても綺麗で…。
フランソワーズは、身を乗り出すと、運転席のジョーに近づく。
一瞬何が起こったのか分からなかった。
フランソワーズの唇が…。
驚いた顔をしていたかもしれない。
フランソワーズは唇を離すと「借りを返したわ」と笑った。
初めて見た笑顔。
ぼーっとしているジョーがいた。
~おしまい〜
PR