国際線乗り場は沢山の人が行き来していた。
待ち合わせのロビーには栗原博士の姿が
「博士!」
ジョーが声を掛けながら近づくと、栗原博士も席を立ちジョーに近寄る。
「ありがとう」
博士はいつもの笑顔でジョーの元に来る。
ジョーは辺りを見回した。
「博士、娘さんは?」
栗原博士は苦笑いを浮かべ
「あそこにいるわ」と指を指す。
2人の視線に気づいたのか、スーツケースを重そうに引きずりながら、1人の女性が近づいた。
アメリカの大学に行っているのだから、どんなに自由そうな女性かと想像していたジョーだったが、目の前の女性は小柄で長い髪を三つ編みにし、メガネをかけて俯いている。
大学生というより、中学生に見えない事もない。
女性は栗原博士の隣に立つ。
俯いたままで顔はよく見えない。
「娘のアンナよ」
博士が紹介すると、女性が小さな声で
「よろしくお願いします」と頭を下げた。
「よろしく」
ジョーが右手を差し出すと、ちらっと様子を見て、恐る恐る右手を出す。
顔が見えたが笑ってはいない。
女性の扱いに関しては慣れている方だったが、アンナは「苦手なタイプ」なのかもしれない。
…もっとも、向こうも同じ事を考えているだろう…そう思えた。
車に乗っていてもアンナは決して自分から口を開かない。
さすがに長時間無言も耐えられずに、博士とジョーが気候の話などをしていた。
フランソワーズならこのだんまりお嬢さんの心を開いてくれるだろう。
ジョーだけでなく、栗原博士も同じ気持ちだから、娘の面倒をフランソワーズに頼んできたのだろう。
博士とアンナの間にもほとんど会話がなく、久しぶりの母娘の再会なのにどうしてこんなにドライなのか
違和感だけが広がっていった。
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