10
コズミ博士の家で、ご馳走になった。
生化学研究所の所長と、栗島博士と一緒に飲んだ。
ここ数日のモヤモヤが消えていくようだった。
まだフランソワーズに謝っていないから、完全に心は晴れてはいないが、まだみんなが起きている時間に帰るのは気が引けた。
コズミ博士に泊まっていくよう勧められたが、歩いて帰れると断った。
栗島博士は言葉を出さずに目で合図をする。
…わかってますって。
家に戻る道を歩いていると、満月が出ていた。
ぼんやりと眺めながら歩く。
自分の過去、現在、未来…。
どれをとっても穏やかではないかもしれないけれど…。
人として生活出来る時位は穏やかに生きたいと思う。
家に戻ると、もうリビングは暗かった。
フランソワーズの部屋は明るかった。
小石を拾いフランソワーズの部屋の窓に投げる。
コツン、と音がして、暫くするとフランソワーズが窓際に出てきた。
「…ジョー?」
俯いたまま、顔を上げようとしない。
フランソワーズはクスッと笑うと
「早く上がったら?」とだけ言った。
暫くして部屋を小さくノックする音がした。
ドアを開けると、ジョーが静かに入ってきた。
黙ったまま。
フランソワーズはベッドに腰をかける。
「…ごめんなさい」
謝ったのはフランソワーズの方だった。
「私一人の問題だと思っていたから…。」
ジョーはフランソワーズの脇に座るなり抱き締めた。
「…ジョー?」
「謝る言葉が見つからない…」
「え?」
言っている意味がわからない。
「キミを…傷つけた」
「そんなことは…」
「ごめん…なんて簡単な言葉では許されない」
「大丈夫よ!!私は全然傷ついていないから」
「過去や未来にばかり気をとられて…」
ジョーが顔を上げた。
久しぶりに見たような気がした。
「今が見えなくなっていた…」
フランソワーズは優しくジョーの頬を撫でた。
そして両手で頬を包み込み、キスをした。
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