9
ここから「家」までは徒歩で10分くらい。
空を見上げると見事な夕焼け。
えっと、この雲は何て名前だったかしら?
サンマ…じゃないわ、イワシ雲。
「お~い!!」
後ろから声がして振り返る。
ジョーだ。
新しいおもちゃに乗っている。
今彼がはまっているおもちゃは、ロードバイク。
購入してから、海岸通をよく走っている。
マリンボーダーの長Tを捲り、チノパンを七分丈まで折り、素足にスニーカーな姿は、パリにいる生意気な少年のようだった。
自転車から降りると、フランソワーズに笑顔で「おかえり」という。
「ただいま」
「どうだった?」
「楽しかったわ」
「そう、よかった。」
穏やかな…本当に穏やかな時間。
10代の頃の私達には想像も出来ない時間。
「ねぇ…」
「何?」
「私とロードバイク、どっちが大切なの?」
「え?」
ジョーは一瞬自転車を見る。
「今、自転車を見たわね!!」
フランソワーズがわざと拗ねる。
「ま、まさか!!そんな」
あたふたするジョー。
10代の頃は何があっても無関心だったのに…。
「ジョーなんて、だ~いっきらい!!」
笑顔で言うと走り始める。
「待てよ!!待てったら!!」
自転車を何故か引っ張ったままジョーが追いかける。
私達…成長しているのかな?
出会った頃を思い出しながら、今の自分に囁いた。
~おしまい~
PR