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梅雨風景

前のマガジントリビュート風味作文、雑談に拍手ありがとうございます。
小躍りしております。(お見せ出来ないのが残念です)

偶然な事に、またまたマガジントリビュート風味を書きました。
この距離感がワタクシ好物のようです^_^;
梅雨が明ける前に。
明けた所もありますが…。
まだ入っていない所もありますが…。

雰囲気だけでも。

続きからどうぞ。

拍手



梅雨風景~マガジントリビュート風味~



ブラックゴーストとの戦いも終息を迎えた。

誰もが「平和」を口にし始め、みな故郷へ帰って行った。

フランソワーズは日本に残っていた。
帰りそびれた…というか、まだ帰る勇気がなかったのかもしれない。
帰る日を後伸ばしにしているうちに…帰るきっかけすら無くしてしまった。
かと言ってこの土地にも馴れる事はなく、家事をこなしている振りをして自分をごまかしていた。

見るに見かねた博士がお遣いを頼んできた。
電車でちょっとした冒険だった。
一人で大丈夫かと心配されたが、ここから自分の足で一歩を踏み出したかったのかもしれない。

電車は常に満員で、ドアが開く度移動する人と一緒に湿った空気が流れて来る。
今日は雨の予報だったが、初めての冒険に緊張したのか、傘を忘れてきてしまった。

電車の窓から見えるどんよりとした雲。
お願い、もう少しでいいから雨を降らせないで。

最寄駅の改札を出た途端、ため息が出た。

雨は本降りになっていた。
ここから家までタクシーを使う訳にはいかない。
どうしようかと頭を悩ませていたら、見馴れた人が駅に入って来た。

「ジョー?」

傘を閉じ、ぶるぶるっと濡れた犬みたいに傘を振る。

フランソワーズの姿を見つけると、笑う訳でもなく近づく。

「傘、忘れただろう?」

「迎えに来てくれたの?」

ジョーは左を指差す
「本屋のついで」

そうよね、私の為に来てくれる筈ないか。
ま、いいわ。家まで濡れずに済んだんだから。

「行くぞ」
あれ?本屋は?
口に出そうとしたけれどやめた。
きっと彼の照れ隠し。
本当は…私を迎えに来てくれた。
そう思うとこんな憂鬱な雨もじめっとした空気も幸せな感じになる。

バンっと開いた傘、同時に雨のしずくが四方に飛び散る。

「ほら」

ぶっきらぼうに傘を向ける。

「ありがとう」

相合傘で家まで歩く。
狭い傘の中、距離も縮まる。
傘の中の密室に、心臓の音も早くなる。
肩にかけたバッグの中に、博士から頼まれた物が入っているのを思い出し、濡れないように両手で抱えた。
布製のトートバッグは、前で抱えても打ち付ける雨に効果はない。
「貸して」
ジョーがトートバッグをひょいと担ぐ。
ちょうど2人の間にトートバッグ。
ちょっと距離が出来たような。
残念なような、ホッとしたような…。

右肩に少し当たっていた雨が遮られる。
ジョーが傘を傾けていた。
「私はいいのよ…あなたが濡れちゃうじゃない」
フランソワーズの右肩が濡れなくなった代わりに、ジョーの左肩が濡れていた。
「いいから!黙ってて」
ジョーの言葉にムッとする。
フランソワーズは傘を左に傾ける。
「何するんだ!」
「いいから!黙ってて!」

そして沈黙…


傘に落ちる雨の音。
トートバッグで遮られはしたが、それでも近い距離。

しばらく黙っていた彼がポツリと呟いた。

「やまない雨はないから…」

「え?」
フランソワーズは思わず聞き直すが
「何にもない」とはぐらかされた。

雨は段々弱くなり、そのうち雨音もしなくなった。
雨が止んでしまえば、傘を閉じるだろう。


雨が止み、ジョーは傘を閉じようとした。

「あ‼︎」
ジョーが声を上げる。

「どうしたの…あっ‼︎」
フランソワーズも視線を傘から空に移した。

「虹…」

2人の目の前に、虹が見事なアーチを見せていた。

「綺麗…」
2人は立ち止まり、空の虹を眺めていた。

ふと隣のジョーをみた。
一瞬柔らかい顔をした。
視線に気づき表情を戻したが、彼の「素」が見えたような気がした。

帰らないのではない。
帰りそびれたのではない。

きっと…
彼を1人にしておけないから。
いえ…
彼が気になって仕方ないから。

フランソワーズはある言葉を心の中で繰り返す。

ヤマナイアメハナイカラ

「ジョー、今日はありがとう」
フランソワーズはジョーを見ず、虹を見ながらお礼を言う。

「ん」

「また…迎えに来てくれる?本屋のついでに」

本屋のついでと言いながら寄らなかった事を今更思い出し、絶句しているジョーを残し、1人笑いながら歩き出すフランソワーズだった。

〜おしまい〜


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