「とりあえず日が昇ったら、心当たりを探してみよう。誘拐だとしたら、何らかのコンタクトがあるはずだから」
ピュンマは呑気にあくびをする。
「そんな事言っていられないだろう?彼女に何かあったら…」
ジョーは呑気なピュンマに苛立っていた。
「今動いたって日が昇ってから動いたって同じだよ、とりあえず仮眠とっておこう。」
ピュンマが席を立ち、自室へ行った。
ジョーはその場から動けなかった。
ピュンマは冷静すぎるんだ。
何かあったらどうするんだ。
取り返しのつかない事になったら…
側にいながら、自分のいっときの感情に流されて…
掴みかけていた彼女の手をあっさり離してしまった。
そんな気持ちだけが心の中を占めていた。
子供の頃から人に優しくされた事などなかった。
無償の優しさなどこの世に存在しないのだと思い知らされた。
誰にも頼らず自分の力で生きていくしかなかった。
だから
フランソワーズの優しさが怖かった。
きっといつか
また
あの頃のように
全てなくなってしまうんだと
その怖さから
自分からその手を離してしまった。
ジョーは両手で顔を覆う。
ただ後悔だけが彼を覆い尽くす。
PR