12
明け方。
まだ空は暗く、波の音だけが聞こえている。
まだみんな寝静まっている時間。
テラスで一人海を見ているジョー。
やはり眠れなかった。
彼女を守るためだったのに、最低呼ばわり。
作戦を話しておけばよかったんだ。と、イワンを憎む。
「あ~あっ」
テラスの柵に腕を投げ出す。
フランソワーズがテラスに出てきた。
物音に一回振り返るが、また海を見る。
「僕を最低な男だと思ったって構わない。キミを守る為なら…何だってやる。」
フランソワーズはジョーの後ろ姿を抱きしめる。
「ばか…」
「ばかですから」
ジョーは海を見つめたまま、背中にフランソワーズを感じたまま。
「ランは…内戦が続く国で産まれた。家は貧しく、家族を支えるために、危ない仕事に手を出していた。
最終的にはスパイになった。
学校にもろくにいけず、年頃の女の子の生活は夢の世界だった。
国の為に戦う事を幼い頃から教え込まれていた。
彼女にとってこの一週間は、普通の女の子として過ごせた貴重な時間だったんだと思う。」
「彼女、これからどうするの?」
「ランと家族が一緒に暮らせる事が許される国で生活をさせようと、イワンが考えている。きちんと教育を受けられるようにね」
「この一週間の記憶は…」
「消さなきゃね。この場所と僕等を覚えていてもらっては困る。」
「あなたとの一週間も忘れてしまうのね…」
何故かわからないが涙が出てきた。
彼女の淡い気持ちを感じ取ったから。
「新しい生活できっといい恋をするよ」
ジョーが振り返り、フランソワーズを抱きしめる。
「こんなサイテー男なんて忘れてさ」
フランソワーズが「‼︎」と顔を上げる。
すかさず軽くキスをする。
「気の無いフリはキツかった」
「…ホント、サイテーだわ」
少し笑いキスを返す。
朝日が昇ってきた。
夜が明けた。
PR