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翌朝。
ジョーは、自分が被検者になった人工臓器のデータを持ち、ヨコハマのコヤナギ博士の研究室に向かった。
フランソワーズは、ジョーに頼まれたデータを持ち、シブヤの研究所に向かった。
今日は大きな学会があり、所長を始め、研究員が出払っている。
留守番を頼まれたのがフィリップだった。
お昼も近かったので、フランソワーズはお弁当を買って行く。
ジョーから教わった美味しいお弁当屋さんだ。
フィリップしかいないから、洋風なものの方がいいかな?とは思ったが、日本の良さも勉強しなきゃ。なんて考えた。
研究室では、フィリップがパソコンを前に唸っていた。
「こんにちは~!!」
フィリップは驚いた。
まさかフランソワーズさんがやって来るとは!!
「所長から、フィリップさんが一人留守番をするから話し相手になって欲しい…って」ニッコリ笑う。
あぁ、神様仏様、所長様…。
こんな素敵な時間をありがとう!!
フィリップは全てのものに感謝した。
「カンヅメと聞いたので、お弁当持ってきたの」
えええ~?
て…手作りですか?!
「ごめんなさい、作ってこようと思ったんだけど…」
…ジョーが離してくれなくて…。
フィリップは手料理に自信がないのかと勘違いする。
顔少し赤いし…可愛いなぁ。
「あ、その前に…」
フランソワーズは鞄からUSBを出す。
「これを所長に渡してください。ジョーからだと。」
ジョー…。
聞きたくない名前だ。
「彼は?」
「具合がよくなったのでコヤナギ博士の研究所に行ったわ。」
「コヤナギ博士の研究所にも行っているんですか?」
ギルモア博士と同様に、生体工学では名のある人物だ。
「大学時代、コヤナギ博士がジョーに惚れ込んだと聞いているわ。時々博士が講義に行かれていたみたいなの…」
昨日の書類を思い出す。
才能はあった。
でも…
正直には認めたくない自分。
彼のあらを探さなければ自分は負ける気がしていた。
あの「目」を思い出す。
「預かります。」
「じゃ、お昼食べましょう。お茶入れるわね。」
フランソワーズが買ってきた弁当を開ける。
日本の「幕の内弁当」所長から教えてもらった。
お茶を入れたフランソワーズが向かいに座る。
「では、いただきましょう」
フランソワーズは神に祈らず手を合わせて「いただきます」と言った。
外見はフランス人だが、中身はもうすっかり日本人だ。
箸も上手に使っている。
「フランソワーズさん、箸使い上手ですね。」
フランソワーズはうつむいて
「ジョーに教えてもらったから」と微笑む。
僕の至福の時間に分刻みで現れるなよ!!
フランソワーズとは対照的に機嫌が悪くなっていく。
「昨日研究所で見たけれど、紺色のフランス車、あれはフランソワーズさんの車?」
「あれは…ジョーの車よ。」
まただ!!
そうだな…スポーツタイプだった…。女性向きじゃないな…。
「へぇ…日本で言えば外車に乗り、イケメン理系男子とくれば、かなりモテるんじゃないんですか?」
つい…口に出てしまった。
完全なやっかみだ。
オトコらしくないな…。でも言っちゃったし…。
「そうね…そうかもね」
フランソワーズはじっと何かを考えているようだった。
悪いことを言ってしまったかと謝ろうとしようとした時。
「地下の劇薬金庫に人が!!」
何か悪い予感がした…。
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