15
「元気で」
「色々ありがとう、彼女と仲良くね」
アユミとタナベは、新天地へ向かう。
ギルモア邸から近いバス停まで見送る。
ジョーとアユミが握手をしていた。
フランソワーズは離れた場所で見守っていた。
バスが出発した。
見えなくなるまで見送ると、くるっと振り返る。
「帰ろうか」
フランソワーズに静かに言う。
バス停からギルモア邸まで徒歩で10分くらいある。
フランソワーズはジョーと並ぶ。
ジョーがフランソワーズの手を握った。
「不思議だな…って思った」
フランソワーズはジョーを見上げる。
「記憶を無くしても、キミの事を好きになっていた。」
記憶がない時の記憶も残ったらしい。
「つまりですね…どんな事があっても、僕はキミの事が好きになるって事で…だから…」
ジョーは少し笑って
「諦めてください」
フランソワーズはクスッと笑う。
「じゃあ私はあなた以外の人を好きになってはいけない訳ですね」
わざと茶化す。
「いじめないでください。」
ジョーが握った手に力を入れる。
「もう…あんな危険な事はやめてくれないと…他の人を好きになるかもしれないわよ。」
「ごめんなさい」
ペコッと頭を下げる。
ジョーが顔を上げると、フランソワーズと目が合う。
2人で吹き出す。
「真面目に言ってたんだけどな」
ジョーが膨れる。
「だって、可笑しいんですもの」
フランソワーズは堪えきれず笑いだす。
「いつまで笑ってんのさ」
うつむいたまま笑っているフランソワーズの肩に手をかける。
肩が震えていた。
「…泣いてるの?」
「…泣いてなんか…いないわ…笑って…」
ジョーがフランソワーズを抱き締めた。
「ごめん…また辛い思いをさせちゃったね…」
「…いいの、戻って来てくれたんですもの…」
フランソワーズが顔を上げると、ジョーがじっと見ていた。
静かに唇を落とす。
フランソワーズは思う。
やっとジョーが帰ってきたと。
空っぽなキスも、記憶を無くしてから彼が自分を好きになってくれたキスもあったけれど、記憶がある、2人の歩いてきた日々の上のキスには敵うわけがないと…。
涙が頬を伝う。
辛い涙ではなく、嬉し涙だった。
「泣き虫」
ジョーはにっこり笑うと再びキスをした。
~おしまい~
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