13
ジョーの記憶が戻らない事以外は、穏やかな日常だった。
ジョーも帰ってきた頃より落ち着いて来ているように感じる。
アユミを呼ぶこともなくなり、フランソワーズと一緒に過ごすことが多くなった。
海が見たいと言ったので、一緒に散歩に行くことにした。
夏の澄んだ海とは違い、冬が近い海はどことなく寂しい。
砂浜を歩いていると、急にジョーが立ち止まる。
「記憶が戻っていないのに、こんな事を言うのは申し訳ないんだけど…。」
フランソワーズは小首を傾げる。
「キミの事が好きになってしまったようだ」
「え?」
何を言い出すのかと思えば…。
驚いているフランソワーズに
「ごめん、言わずにはいられなかった。キミの写真を見てから…」
写真?
「キミが気になって仕方ない…」
何だろう…この気持ちは。
記憶を無くしたジョーは、フランソワーズとイチからやり直そうとしているのか…。
もう泣きすぎるほど泣いているに、涙は枯れることがないようだ。
涙がつっ…と流れた。
「キミは僕の事を泣き虫だと言ったけど、キミの方がずっと泣き虫だよ…」
「…ごめんなさい」
「きみの気持ちが聞きたい」
フランソワーズはジョーと向かい合う。
少し背伸びをして、ジョーにキスをした。
「これが私の答えよ」
このまま記憶が戻らなくても、ジョーとイチからやりなおしても…いいのかもしれない。
そんな事を考えてしまった。
サイボーグであることも、過酷な運命だという事も、壮絶な過去も、全て忘れているのだから、それはそれでいいのかもしれない。
「寒いから家に帰りましょう」
引き返し、歩き始めたフランソワーズ。
砂浜に足を取られバランスを崩した。
「あ!危ない!!」
ジョーがバランスを崩したフランソワーズを抱き止める。
…が、ジョーもバランスを崩し、一緒に倒れた。
フランソワーズの下敷きになったジョー。
フランソワーズが身を起こし「大丈夫?」とジョーを起こそうとしたその時。
急に抱き締められた。
「え?」
フランソワーズは動揺した。
「どうしたの?」
「…フランソワーズ」
「え?」
彼が私の名前を呼んだ。
PR