一緒に電車に乗り、アズナブールは先に降りる。
「明日、待っていると伝えて下さい。」
電車が動き出す。
ホームを歩くアズナブールの姿が見えた。
落ち着いた雰囲気と、フランソワーズに対する情熱に、彼ならフランソワーズを幸せにしてくれる…そんな事すら思ってしまう。
電車の窓に写る自分の顔が、とても幼く見えた。
頼りなくて、約束すら出来ない男。
彼女を幸せに出来ない男。
雑誌に載ったフランソワーズの写真を思い出す。
自分の知らないフランソワーズ。
その頃のフランソワーズを知るアズナブール。
その頃…愛し合っていた…2人。
気づくと手で拳を作っていた。
自分が…彼女の側にいて…本当にいいのか…。
電車を乗換え、最寄り駅に着いたときには深夜だった。
バスなどないから、家まで歩く。
空を見上げると星が出ていた。
澄んだ真冬の空に満天の星。
顔を上げ空を仰ぐ
鼻の奥がつんとした。
自分が普通の人間なら…。
彼女を幸せにすると断言出来るのに…。
何の為に戦わなければならない?
誰のために…?
ようやくギルモア邸の敷地内に入る。
林を歩いていたら、向こうから誰かが歩いてきた。
夜中なのに?
よく見るとフランソワーズだった。
向こうも気づいたようだ。
走り寄ってきた。
「ジョー!!どうしたのよ!!何の連絡もなしに!!心配したのよ!!」
…いつものフランソワーズだ。
「何かあったの?携帯も通じないし…」
あ…。
電源を切っていたのを思い出した。
起動すると履歴がだ~っと埋まっていた。
「ごめん」
「何事もなくてよかったわ…さ、帰りましょ」
フランソワーズが背中を向けた。
「今、誰に会っていたか…わかる?」
フランソワーズが振り返る。
「え?」
「キミのよく知ってる人」
「わからないわ…」
「アズナブール先生だよ」
フランソワーズの顔が強張る。
「キミは彼の事をどう思っているかわからないけど、彼はキミとはまだ終わっていないらしい。」
フランソワーズはじっと俯いたままだった。
「何にせよ、きちんと話し合わないといけないと思う」
ジョーは一枚のメモをフランソワーズに渡した。
「明日…いや、今日だな…そのホテルのラウンジで待ってます…って」
それだけ言い終えると、フランソワーズに背を向け歩き出す。
フランソワーズはジョーの背中に訴える。
「待って!!ジョー!!私の話も聞いて!!」
「ごめん、今は何も聞きたくない…ひとりにしてくれる?」
その言葉に何も言えなくなるフランソワーズ。
一人家に向かう後ろ姿をただ見ているしか出来なかった。
アズナブール先生は、ジョーにどこまで話したの?
私が中途半端な態度を取っていたから…。
でも…何故ジョーと会ったの???
フランソワーズはジョーから渡されたメモを見る。
…きちんと…話し合おう…。
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