家に戻ったフランソワーズをまず出迎えたのは、たくさんの荷物とジェロニモだった。
「早かったな」
「ジョーは?」
「リビングにいる」
リビングに向かおうとするフランソワーズに
「ちょっと待て」と静止するジェロニモ。
「え?」
「俺はもう休むから…これを」
箱を出す。
「誕生日おめでとう」
「ありがとう」
「ココペリだ。ネィティブアメリカンのお守りだ。幸福を祈る」
可愛らしい笛を吹いた人形。
「ありがとう、大切にするわ。」
「行ってやれ」
ジェロニモはリビングを指差すと、自室へ戻った。
フランソワーズはリビングの扉を開ける。
暖炉の火のせいか暖かい。
暖炉の前に横になっている…ジョー。
「こんな所で寝ていて…もう」
フランソワーズはジョーに近づく。
久しぶりに間近で見たような気がした。
今日は出かけなかったのか、パーカーとジャージで丸まって眠っていた。
「幸せそうな寝顔ね」
フランソワーズはクスッと笑う。
ジョーの脇に座る。
「わたしね、ゴーチェに告白されたの、ハトランド国にしか採れない貴重な鉱石で作られたネックレスを贈られそうになったわ…ダイヤよりも輝いていて、繊細で…透明だった。
そんなつもりじゃなかったのに…。
ただ日本を案内したかっただけなのに…」
フランソワーズの足元で寝そべるジョーは、相変わらず寝息を立てている。
「あなたが、みなとみらいで女の子と会っていたのを、聞く勇気もなくて、1人で考えちゃって、ゴーチェの話もきっと上の空だったのね。ゴーチェの気持ちにも気づかなかった。」
ジョーがピクッと動く。
「みなとみらいの女の子って…何?」
「え?」
寝ているものだと思い、独り言を言っていたのに??
「起きてたの?」
「もちろん」
ジョーが起き上がる。
「おかえり」
「…ただいま…どこから聞いてたの?」
「もったいないなぁ、貴重な鉱石!」
「そ、そこからっ?」
「みなとみらいって…あぁ!わかった‼︎」
ジョーは思い出したかのように、パーカーのポケットを探る。
「誕生日おめでとう」
「え?」
フランソワーズはジョーから包みを渡された。
「この包装紙…」
「貴重な鉱石でないけど」
包みを開ける。
「ありがとう」
澄んだ蒼のガラス玉が付いたネックレス。
前に2人で赤レンガに行った時、見つけたもの。
「1人で行ったの?」
ああいう所は1人では苦手だと言っていた。
「ちょうど大学時代の友達に会ってさ、頼み込んで同行してもらったよ。報酬はチョコレートパフェだ」
ああ…。
あの時の光景が蘇る。
私へのプレゼントを買いに行っていたんだ。
このネックレスを見つけた時、立ち止まったのを覚えていてくれたんだ。
それなのに…私は。
「ごめんなさい、誤解していたの」
ジョーはニコッと笑い
「寂しい思いばかりさせちゃって、ごめん。これからも家にいない事が多いけれど…」
フランソワーズと同じ目線になり、顔を近づける。
「信じて…待ってて」
ジョーはフランソワーズを抱きしめる。
パーカーとイブニングドレスのアンバランスさを埋めるように、優しく包み込むように。
フランソワーズは言葉にならず、ジョーの胸でこくりと頷いた。
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