男は車に乗り込んだ。
この前刺した男の事で仲間が集まってくる頃だから、偵察に行くように…と。
男に着けた発信器が、とある海岸あたりで途絶えた。
前に一度近くまで偵察に行ったがまだ揃っていない…とかで、そのまま帰った。
何故全員揃わないと攻撃出来ないのか?と聞けば、全員揃った所で攻撃した方が、ギルモアへのダメージも大きい…と。
どうやらギルモアという人物に個人的に恨みがあるらしい。
刺した男…。
自分と年もそう変わらない、ただの若者に見えた。
何故?個人的な恨みがあれば、その対象者を攻撃すればいいのに…。
虚しい…ただ虚しさだけが襲ってきた。
途中でふと車を止めた。
ビルが立ち並ぶ都心の一角にぽっかりと開いた空き地のようなスペースに、大きな桜の木が一本。
満開の桜が目に入る。
…この景色…何処かで…。
天を仰いで目を細めていると、後ろから声を掛けられた。
「ナツ…ナツでしょ?」
男は振り返る。
そこには2人の女性が立っていた。
どちらも…知らない。
「ナツ!!」
ひとりの女性が近づいてきた。
「何処に行っていたの?怪我はないの?半年も何をしていたの?」
矢継ぎ早の質問に黙っているしかない。
知らないのだから。
「ミチさん、ちょっと待って」
後ろにいた女性が中に入る。
「あなたはナツさんよね?半年前に交通事故で行方不明になった…」
「俺は…X」
「!!」
フランソワーズはその「X」という名を聞いている。
ジョーを刺した男の名前だと、ジョーの電話に出たピュンマが教えてくれた。
「あなた…あなたが…ジョーを…」
「ジョー?」
男は首を傾げる。
「…009よ…」
「あぁ」
「何故?何故そんなことを…」
「あんたの家の『ギルモア』に、うちのボスが恨みがあるらしい」
「え…?」
「まぁいい、そのうち家に寄せてもらうから…覚悟して待ってるんだな…」
男はミチを見ることなく、車に乗り立ち去った。
ミチはその場に座り込む。
「何が…」
今、目の前で起こった事が理解できていない。
それは勿論フランソワーズも同じだった。
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