5
今朝は雨が降っていたのに、夕焼けが広がっていた。
現実から逃げた1日だった。
答えは出たのかどうかもわからない。
でも、朝出てきた時とは気分が違っていた。
私は人間だ。
逃げ出したいときもある。
彼には・・・迷惑かけちゃったけれど・・・。
でも、今日だけは・・・。
家の近くまで歩いた。
ジョーが玄関前の植木に水を撒いていた。
「・・・ただいま」
怒られるのは覚悟の上。
そっと見上げる。
「・・・お腹空いただろ?」
「・・・え?」
「夕飯作っておいたから」
顔は・・・怒っているが、口調はそんなでもない。
いっそのこと怒ってくれればいいのに・・・。
家に戻ると、しんと静まりかえっている。
「みんなは?」
「出かけた」
こんな日にジョーと2人きり・・・。気まずい。
自分が蒔いた種だけれど・・・。
キッチンからいい匂いがする。
カレーが作ってあった。
「もう少しでご飯が炊けるから、着替えて手を洗ってきなさい」
まるでお母さんね。
口には出せず、黙って部屋に行く。
部屋は朝のままだった。
思いついた家出だから、取るものもとりあえず・・・だった。
テーブルの上の携帯電話には、履歴があった。
ゴメンナサイ
心配させた。迷惑かけた・・・。
着替えて、手を洗って、リビングに戻る。
ちゃんと食事の準備をしてくれていた。
2人向かい合わせで座る。
「いただきます」
ジョーが言う。
カレーを一口入れる。
おいしい・・・。
涙が出てきた。
「・・・そんなにイヤだった?」
ジョーが静かに口を開く。
「・・・ごめんなさい」
「キミがイヤだというなら、順番をひとつずらしてもよかったんだ。ボクも時間が取れないから博士に代わってもらうよ。それならいいだろ?」
時々こういう気持ちになる。
彼に身体の中を覗かれるのがイヤなときがある。
たぶん・・・
彼には普通の女として見て欲しいのだと・・・。
「・・・ごめんなさい」
「でもさ、大事なことじゃない?もし、キミの身体に不都合があったら、早めに見つけられるんだよ?」
ジョーの言うことは正しい。でもその通りです。と言いたくないときもある。
「もう・・・逃げません・・・」
「メンテナンスがイヤで脱走したのはキミが初めてだよ」
呆れているのか少し笑いながら言う。
「ボクだってさ、気を使ってここ数日一緒に寝ていないというのに」
彼も数日前から準備をしてくれていた。
それなのに・・・。
「ボクの心のメンテナンスをして欲しいくらいだよ」
おどけて笑う。
「・・・」
きょとんとしているフランソワーズに
「ここ、笑うとこ」
ジョーが呆れる。
慣れない家事を一日やっていたのだろう。
フランソワーズが片づけをしているうちに、ジョーはソファーで眠っていた。
彼の大事な1日を自分のわがままでつぶしてしまった。
でも・・・彼は怒らなかった。
きっと、気持ちをわかってくれているから。
自分も同じだから・・・。
ジョーに毛布を掛け、キスをする。
ゴメンナサイ
そして
アリガトウ
(おしまい)
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