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まだ、夜も明けていない時間に家を出た。
彼に気づかれないように…。
逃げるように早足で歩く。
行先は決めていない、ただここから逃げたかった。
気づいたら駅前にいた。
ホームに入ると辺りが明るくなってきた。
まだ街が動き出す前。
ほとんど人のいないホーム。
空気が澄んでいた。
深呼吸をする。
やってしまった。と思う自分と、今ならまだ戻れると思う自分。
始発電車がホームに滑り込んできた。
ドアが開く。
電車に足を踏み入れた。
ゴメンナサイ
行ける所まで行こうと思っていた。
辿り着いたのは見知らぬ無人駅。
屋根すらないホーム。
ぽつぽつと雨が当たって来た。
乗換えの電車はまだ来そうにない。
とりあえず駅から出て雨宿りをしようと思ったら、急に雨が当たらなくなった。
「?」
ビニールの傘が頭上にあった。
おねえさん、どうしたの?」
高校生らしい。
「あ、ありがとう、でもいいのよ。雨宿りするから」
「この傘使い捨てだし、学校の忘れ物持ってきただけだから、持って行っていいよ」
「あなたは?」
「学校までそんなに歩かないし、いいよ、持って行って」
高校生はそう言うと、走って行ってしまった。
彼と・・・面影が似ていた。
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