ギルモア邸の近くで行われる夏の花火大会。
毎年その時期に戻って来ている全員で見に行っていたのだが、今年はだれもいなくて、ジョーとフランソワーズ2人きりだった。
コズミ博士の知り合いの方から、浴衣を縫ってもらった上に、着付けまでしてもらった。
浴衣姿で帰宅したフランソワーズに、ジョーは「行こうか」とだけ告げる。
反応を期待した訳ではないが、初めての2人きりの花火大会と着せてもらった浴衣に気持ちが高揚していたフランソワーズは少し落ち込んだ。
花火会場はかなりな人混みだった。
スニーカーで先に歩くジョーに付いていくのが必死だった。
慣れない下駄につい遅れてしまう。
ふと気付いたのかジョーが振り返り、立ち止まる。
「あ、ごめん、下駄だっけ」
ジョーはフランソワーズの手を握ると、再び歩き出す。
さっきよりゆっくり目に。
でも周りの人混みに手を離してしまいそうになる。
ようやく座れる場所を見つけた。
浴衣だから気をつけて座る。
周りはカップルだらけで、自分たちだけの世界のように密接している。
シャツと浴衣が触れ合う距離。
どこからもらってきたのか、ジョーはうちわを扇いでいる。
「高層マンション好評分譲中」
不動産会社のようだ。
気まぐれにフランソワーズに扇いでみせる。
前髪が風でなびく。
「私はいいわ」
ジョーからうちわを取り上げて、ジョーに扇いであげる。
ヒューン
ドーン
「おぉ‼︎」
周りから一斉に声が上がる。
大輪の花火が次から次へと上がる。
「キレイ…」
「うん、キレイだね」
ジョーの方を見ると、ジョーはフランソワーズを見ていた。
「え?花火…」
ジョーは周りが花火に気を取られているのを確認して、フランソワーズにキスをした。
「‼︎な、何?」
「キミが一番キレイ」
ヒューン
ドーン
大輪の花火。
花火の反射か、真っ赤な顔のフランソワーズ。
「ホント、キレイだ」
ジョーは満足気にフランソワーズから視線を花火に移した。
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