10
明日ジャンは帰る。
夕食時にフランソワーズも一緒に帰ると発表し、皆が驚いた。
即ジョーに「それでいいのか?」と皆が詰め寄る。
ジョーはテンプレートの如く「祖国に帰るのに止める事は出来ない」と言っていた。
そこに心がないことは、誰もが知っていた。
テラスで一人ぼんやりしていたジョーに、フランソワーズは近付く。
「明日、帰るのよ…」
返事はない。
「…引き留めてくれないのね…」
フランソワーズが半分非難混じりに呟いた。
ジョーはフランソワーズと向かい合う。
「ボクが今キミを止めたら、キミは余計に迷うことになるだろ?自分で決断したんだから…ボクは止めないよ…」
「…ジョーの…ばか」
ジョーの胸に凭れる。
ジョーが優しく抱き締める。
でも…。
心を何処かに置いてきているような気がしてならなかった。
部屋に戻り、スーツケースに荷物を詰める。
棚に飾ってある写真を手に取る。
ジョーと撮った写真。
写真は嫌いといいながら、とてもいい顔をしている。
スーツケースに入れようかと思ったが、同じ場所に戻した。
部屋を飛び出し、ジョーの部屋の前で立ち止まる。
電気が消えている。
拒絶されているように思えて悲しかった。
「明日からいなくなるのよ、最後の夜なのよ…」
涙が零れた。
ジョーも寝てはいなかった。
広くなってしまったベッドに、大の字になって天井を見上げていた。
フランソワーズの声だって聞こえていた。
でもその場を動こうとは思わなかった。
心が…痛かった。
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