翌朝、朝食に誘うか躊躇っているフランソワーズの部屋をノックしたジョー。
「おはよう、ご飯食べに行こうか?」
昨日の夜の様子が嘘のように、普通に接している。
ホテルの近くにあるカフェでクロワッサンを食べる。
フランソワーズはカフェ・オ・レ
ジョーはエスプレッソの倍量
ギャルソンが運んできたエスプレッソを
口につけると、早速今日の段取りを話し始める。
事務的な態度に少しムッとするフランソワーズは、ギャルソンを呼び、何やらオーダーをする。
しばらくすると見るからに甘そうなタルトが運ばれてきた。
「朝から甘いの?」
ジョーがあからさまに嫌な顔をする。
「あら、見た目より甘くないわよ、一口どうぞ」
フランソワーズはタルトを一口分切るとフォークに刺し、ジョーの口元に持って行く。
口元に突きつけられたら口を開けるしかなく、あーんという体制で顔から火が出そうになる。
他の客はそんな2人に構う暇もないし、お国柄かそんな風景は普通だから誰も見ていないのだが、ジョーには店内の客全員に見られているのではないかと思い目を閉じる。
フランソワーズはそんなジョーを見てクスッと笑う。
からかうつもりはないが、時々困らせたくなる。
その時の彼の対応が楽しくもあった。
「…明日はどうするの?」
口に入れたタルトを飲み込むと、ジョーはフランソワーズに聞く。
「明日は誰にも会う予定はないわ、せっかくパリに来たんだからあなたを案内するわ」
ジョーは瞬きもせずフランソワーズを見ている。
「え?何か変な事を言った?」
「いや…もういいの?」
ジョーはあくまでもフランソワーズのボディーガードに徹する気らしい。
「ええ、あなたに見せたい景色が沢山あるの」
にっこりと笑うフランソワーズに、ジョーは固まっていた。
用事がなければ来る場所ではないと思っていた。
観光なんてありえないと思っていた。
案内…それって…
やっぱりデートだよね。
フランソワーズが自分に好意を持ってくれているのは解っていた。
でも、仲間だから、そう、お国柄だ。
数々のスキンシップもお国柄だからなんだ。
彼女はただの仲間だ。
ジョーの心に流れ込んでいた温かい物が、急に冷えたような気がした。
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