12
早い時間に出掛けたはずだった。
シブヤの研究室にコズミ博士から預かった書類を届ける。
研究員達は久しぶりのフランソワーズに感動し、なかなか帰してはくれない。
しかも今日は保護者のように着いてくる茶髪がいない。
これはチャンスと研究員達が話しかける。
気がつくと予定より時間がたっていた。
慌てて帰ろうとしたが、街はすでに人だらけだった。
意識しないようにと努力するが、色々な声を拾ってしまう。
早足で歩いていたら、ある声を拾ってしまった。
「島村さんはフランソワーズさんとどういう関係なんですか?」
え…?
辺りを見回したら、とあるカフェのテラス席にジョーとトモエが座っていた。
シブヤだったのね。
そういえば女子高生が大好きなファッションビルがあるって聞いたことがあるわ…。
ジョーはあの…濃紺のシャツを着ていた。七分袖を捲っている。
ミニスカートがよく似合うトモエと比較すると、少し年上の落ち着いた感じに見えた。
まるで絵を見ているかのような風景。
どこから見てもカップルにしか見えない。
ジョーの答を聞きたかったが、他の音で聞こえなくなった。
私…何をしているの???
フランソワーズは慌ててその場を去る。
電車とバスを乗り継いで、ようやくギルモア邸の近くにたどり着く。
バスから降りると雨が降ってきた。
電車でも沢山の声を拾ってしまい、もうクタクタだった。
段々雨は強くなるが、濡れるのを構わずに歩き続けた。
ジョーはあの時何と答えたのだろう?
1番聞きたい…
でも1番聞くのが怖い答え…。
びしょびしょだった。
涙も出てきた。
疲れたのと寂しいのと何だかよくわからなくなっていた。
ふと雨がやんだ。
振り返るとジョーが傘をさして立っていた。
「ずぶ濡れじゃないか!!何してるんだ!!風邪でもひいたら!!」
「…もう、いいわ」
「…何が?」
「あなたにとって私は何?」
「…何…言ってるんだ?」
「あなたは私に何も言ってくれないわ、だからいつも不安なのよ!!」
トモエと腕を組んで歩いている後ろ姿が浮かぶ。
「言葉に出さなければわからないのか?」
ジョーは怒っているようだったが、そんな事はどうでもよかった。
「わからないわよ!!」
「じゃあ何て言えばいいんだ?愛してる…とでも言えば安心なのか?」
「そんな言い方ないじゃない!!」
「だって言葉に出さなければわからないって言うからさ!!」
雨の中、一つの傘の中で、喧嘩している2人。
雨脚も段々強くなり、2人はびしょ濡れになりながら、喧嘩していた。
これだったのかもしれない…。
嫌われたくなかったかったから、彼に私の本音を話した事はなかったのかもしれない。
トモエみたいに本心をすぐ言葉に出せるのが羨ましかったのかもしれない。
ジョーの溢れるほどの想いは嬉しいほど感じている。
でも…。
時々こうやって本音を語り合わなきゃダメなんだと考えた。
雨は降り続いていた。
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