9
車は段々人のいない所に向かう。
そしてある場所に止まる。
ジョーが車から降りたので、フランソワーズも後に続く。
「ここは…」
「僕が育った所さ」
古い建物がひとつ。
もう誰もいないようで朽ちていた。
「ここ、孤児院だったんだよ」
壊れかけた古い門を開ける。
ギギ…っと音がした。
庭を抜けると裏に広がる海。
「いつもここで…」
ジョーが大きな石の上に座る。
「お母さんが迎えに来るって待っていた。」
幼いジョーの姿が見えたような気がした。
「僕がサイボーグになる前の人生なんてロクなものじゃなかった」
少し大きくなると、喧嘩に明け暮れやがて少年院に入り、逃げ出そうとして捕まりそこでサイボーグにされたと聞いている。
「今の生活なんてあの頃の自分には想像もつかなかっただろうな…」
私はサイボーグにされたことを嘆きながら生きていた。
でも彼は今の人生があることはサイボーグにされた上での事だと理解している。
「キミに似合う男でもないんだよね」
ふっと笑った顔が切なかった。
「そんな事…ないわ。」
何故彼は私に自分の過去を見せたのか…。
今まで決して語らなかった話を…。
「何かあったの?」
自分のモヤモヤよりもジョーの心の闇が気になった。
「別に…ちょっと行き詰まっただけさ」
深呼吸をし、立ち上がり振り返る。
「ごめん、こんな所に遠出なんてさ」
「ううん、あなたが私に自分の生い立ちを語ってくれるなんて思ってもいなかったから…」
普通の女の子だったら…。
あなたは私に生い立ちを打ち明けたりはしないだろう。
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