8
翌朝。
キッチンでフランソワーズが朝食を作っていると、ジョーが起きてきた。
「あら、おはよう」
「おはよ」
いつもの朝のキス…あれ?
「お酒の匂い?」
「そう?」
フランソワーズの疑惑の目を避けるように背を向けてコーヒーを淹れるジョー。
「ねぇ、今日暇?」
「家事はあるけど…」
「こんないい天気だし、何処か行かない?」
「え…?」
驚いた。
ジョーから誘ってくれる事はあまりないから。
いつも買い物のついでの寄り道デートだったし…。
「トモエさんはいいの?」
「ピュンマが今日はお供してくれるって」
そう。
「家事は手伝うからさ」
「ジョーは忙しくないの?」
「今日は特に用事はないよ、じゃ決まりね」
トモエは、今日のお供がピュンマだと聞き、何故ジョーじゃないのかとストレートに聞いてきた。
「ボクじゃ不満かい?」
ピュンマのスマートな返事に戸惑うトモエ。
トモエとピュンマが出掛けてから、家事を済ませジョーとフランソワーズも出かけた。
天気がらいいから、という理由はどうかと思うが、彼からどこかに行こうと誘われたのはとても嬉しかった。
季節はすっかり夏だった。
車は海岸線を走る。
海水浴客やサーファーで賑わっている。
空は青く、雲は白い。
車内はクーラーがかかり快適だったが、そっと窓を開けてみた。
むあっとした空気と、潮の香りが同時に車内に流れ込み、慌てて窓を閉めた。
「どうした?気持ち悪くなった?」
窓を開けた事が車酔いか何かかと思ったのかジョーが聞いてきた。
「行き先を教えてくれないかしら?」
ジョーはそれきり黙り込んだ。
こんなのデートじゃないわよね…。
ジョーはトモエさんと一緒でもそんな態度なのかしら…。
トモエさんなら沢山楽しいおしゃべりをして、ジョーが黙っていてもお構いなし…って感じよね。
フランソワーズは窓の外の海を眺めながら心で呟いた。
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