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日本に戻った。
アユミとアユミの恋人の脳科学者タナベは、ジョーの記憶が戻るまでギルモア邸に残ることになった。
イワンと博士とタナベが、ジョーの脳内を調べた所、生体部分の影響なので記憶の回復は時間が解決するだろうということだった。
ただ、強いストレスにより、見られたくなかった記憶を強制的に遮断しているので、フランソワーズの事を思い出すのはかなり時間を要するだろうという事だった。
とにかくリラックスした環境が薬らしく、研究所のメディカルルームから自室に移動した。
ジョーは始めて見る部屋のように、落ち着きがなかった。
テーブルの上の本を手に取る。
「物理工学?」
記憶がない…。
フランソワーズがジョーの部屋を訪れた。
「フランソワーズ」
笑顔で振り返るジョーを錯覚した。
目の前にいるのは怪訝な顔をしたジョーだった。
「キミは誰?」
遠慮のない冷たい言葉だった。
「…私の名前はフランソワーズ、フランス人よ。」
「何故フランス人なのに日本にいるの?」
「…それは…」
フランソワーズが戸惑うと
「アユミはどこにいる?」
フランソワーズは固まった。
私は今、彼の記憶の一片もないのだと…。
彼を支えるのは、記憶喪失になった後に一緒にいたアユミなのだから…。
「…呼んでくるわね」
静かにドアを閉めた。
リビングのソファーで元気なく俯くフランソワーズに、ジェットが「キレた」
「あの馬鹿野郎の目を覚まさせてやる!!頭一発殴れば記憶なんて戻るんだ!!いつまでも甘やかしてられっかよ!!」
ジェットの剣幕にみんなが一斉に制する。
「ジョーが、ジョーが…って、じゃあフランソワーズの事はどうでもいいのかよ!!」
フランソワーズがジェットを見上げる。
「いいのよ、私の事は…」
ジェットはリビングを飛び出した。
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