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ピュンマがメモの座標をコンピューターに入力してみる。
「…モスクワ?」
何故モスクワなのだろう。
モスクワ…と言えばイワンだが、彼はあと数日眠っているだろう。
起きるのを待っていられなかった。
ピュンマは研究所で待機をして、イワンの目覚めを待つことにした。
アルベルトとフランソワーズがモスクワに向かう。
今はただ少しの手懸かりにでもしがみつきたかった。
モスクワは寒かった。
体温調整を忘れてしまったアルベルトもさすがに「寒いな」と言う。
ウールのロングコートにぐるぐると長めのマフラーを巻いたフランソワーズが黙って頷く。
「こう寒いと…あれが食べたくなるよな…」
「あれって?」
「鍋やった後にジョーが作ってくれた…」
「「シメのゾースイ!!」」
2人同時だった。
お互いにクスッと笑う。
冬になると、数が多いからよく鍋をする。
具を全部食べ終わった汁をジョーは「いい出汁」と呼んでいた。
そして残り物野菜と冷ご飯を入れ煮込み、溶き卵を入れこう言った。
「〆の雑炊出来上がり♪」
思い出すだけで涙が溢れてしまう。
アルベルトが肩をポンと叩き
「大丈夫だから、俺達で助けよう」
と慰めた。
赤の広場に行ってみた。
「私、ここ前にも来たことがあるわ」
「ほー、意外だな」
フランソワーズとロシア…何の共通点がある?
「モスクワ国際バレエコンクールに出場した事があるの」
「なかなか優秀だったんだな」
「賞は取れなかったけれど、初めての異国だったわ…」
まだほんの少女の頃の話よ…。
ふと見覚えのあるダウンジャケットを見かけた。
「ジョー?」
フランソワーズは必死で人を掻き分ける。
近くまで来た。
会いたかった人が目の前にいる。
しかし…彼の隣には黒髪の女性がいた。
「ジョー、どうしたの…?」
フランソワーズの呼び掛けに全く反応がなかった。
まるで初対面の人に会うかのような顔。
フランソワーズはその場に立ち尽くすことしか出来なかった。
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