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ロシアに入ってから、青空を見たことがない。
青い空と青い海が大好きなジョーに、こんな空は耐えられるのかと思ってしまう。
今日は雪まで降りだした。
ブーツの跡が続いている。
ここに跡を残したくないのに…。
ボリジョイ劇場の前に立つ。
バレエが全てだったあの頃。
世界の高い壁を知ったのはここだった。
またここに来るとは思わなかった。
こんな事で…。
アルベルトは革のハーフコートを着込んでいた。
不安になり、袖を掴む。
アルベルトが振り返る。
「大丈夫か?」
不安を感じ取ったのだろう。
いつもはクールだが、本当は優しいのは長い付き合いだから知っている。
「ええ」
「じゃ、行くか」
イワンが指定した場所に、イワンの父親のガモ博士の研究施設があった。
イワンの産まれた家だ。
イワンにはロシアの思い出などないかもしれない。
父親に脳を改造された。
母親は止めに入って殺されたらしい…。
イワンは父親に対して何の感情も持っていなかった。
ただそこにジョーがいるとしか言わなかった。
研究施設にはガモはいなかった。
ここ数年戻っていないらしい。
ガモの弟子たちが研究施設を守っていたが、やり方がフェアでなかった。
研究員を誘拐し、監禁して働かせていた。
何故か誘拐された研究員の家族や恋人も施設内で暮らしていた。
驚いたのは家族や恋人の体内には爆弾が仕掛けられていた。
逃げ出すことも出来なかった。
フランソワーズがハッキングに成功し、爆弾のスイッチを無効にした。
研究施設のコンピューターを「掃除」する。
フランソワーズは2つのファイルに目を止めた。
「001」と「009」
「001」は、ガモが残した改造時のデータのようだ。
博士に渡す為、バックアップを取る。
「009」は、最近のデータだった。
そのファイルを読んでいくうちに、
ジョーが何故無反応だったのか、理解してしまった。
「…そんな事が…」
出来るというのか…。
イワンと博士とピュンマがドルフィンで駆けつけた。
フランソワーズはイワンの事が気になったが、イワンは故郷の土を踏むことを拒み、ドルフィンに残った。
ピュンマがアルベルトと合流し、研究施設の破壊にあたる。
捕らえられた研究員達とその家族を救出する。
ジョーと黒髪の女性も救出されたが、「あの服」を見ても、アルベルトとピュンマの顔を見てもジョーは何の反応も示さなかった。
アルベルトは2度目だったから、さほど驚かなかったが、ピュンマは戸惑いを隠せなかった。
「ジョー、どうしたんだ?」
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