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穏やかな春の日に 9

前回作文に拍手ありがとうございます!

また一カ月近くかかりましたが、今回で終わりです。

お付き合いありがとうございます!



続きからどうぞ。


拍手





「へぇ、凄い家が建ったんだね」

ジョーが新しい家を見上げる。

フランソワーズはジョーを新しい家に案内する。


この瞬間をみんなが待ちわびていた。
きっと戻って来ると信じていた。
だから誰もこの地を去ろうとしなかった。


ジェットとピュンマがジョーに抱きつき
「幽霊じゃないよな?」と頬をつねる。

ジョーは笑いながら「痛たたた」と頬を押さえる。



ジェットはジョーと同じ体験をしてきた。
2人は同じ事を言う。

気がついたらここにいた…と。

ジェットがジョーに耳打ちする
「お前がいない間、フランソワーズはいつも海に行っていて、誰もいないのにあたかも隣に誰かいるかのように話してるんだ…気が違ったかと心配してたんだぜ」

「そうなんだ…」
ジョーはフランソワーズを目で探したが、姿がなかった。



みんながジョーを囲んで騒いでいる間、フランソワーズはイワンの部屋にいた。


イワンはあれから眠り続けていた。
博士の診察ではどこにも異常がないという。


「あなたなの?」

フランソワーズの問いかけに答える事もなく、普通の赤ん坊のように眠っている。


彼等を宇宙に飛ばした事でイワンを責めた。
何故自分も一緒に宇宙に送らなかったのかと…。

イワンがフランソワーズを送らなかったのは、まだ2人を助ける手段があったからで、他のみんなを安全な場所に飛ばした後、意識を失ったまま。

「もう目が覚めてもいいんじゃない?
寝ぼけ王子様」

イワンにかかった毛布を直す。



「手荒い歓迎だったよ」
ジョーがイワンの部屋に入ってきた。

「…眠ったままなの?」

「ええ…」

「キミは僕がいない時間が長かったのかもしれないけど…僕にはその長い時間がないんだ。あの時宇宙で意識を失い、気がついたらあの砂浜に立っていたんだ。
キミがどんな思いで今までいたのかも…僕にはあっと言う間だったから…」

戸惑うジョーにフランソワーズは笑う。

「こうやって無事に戻ってきてくれただけで充分よ!あなたの部屋、まだ何もないけれど…見る?」

「用意していてくれたんだ」

「もちろんよ、きっと気に入ってくれるはずだから!」

フランソワーズがジョーの手を引く。


部屋のドアを開け、ジョーが感嘆の声を上げる。


「すごいや」

まるで目の前に海があるかのような大きな窓。

「博士があなたの為に特注で作ってくれたのよ」

フランソワーズは窓枠に腰掛ける。

ジョーは隣で大きなガラスに手をかけて外を見る。


「あなたのいない間、ある人と知り合ったの」

ん?とジョーはフランソワーズを見る。

「桜が満開になった並木道で具合が悪くなって、心配してくれた人。
その後この海岸で再会したの」

ジョーは黙ってフランソワーズの話を聞く。

「彼は記憶喪失で、海が好きだという事しか知らなかった。
でも私が海岸を散歩しているとどこからともなく現れて、しばらくお話するの。
天気の話とかこの辺にある美味しいパン屋さんの話とか…ホントたわいのない話なの」

ジョーは再び海を見る。

「彼の存在は私を助けてくれた…そして昨日の夜、彼は記憶が戻ったと言ったわ…そして彼は存在しない人間だった。と私に告げたわ…」

フランソワーズがジョーを見上げる。
ジョーはそれに気づき視線をフランソワーズに戻す。

「そしてその翌朝あなたが帰ってきた…あなたに抱きしめられた時わかったの。
あの時のあの人はあなただったんだって。
あなたの想いが実像となって現れたんだって。」

フランソワーズは俯く。


「でもあなたに何も記憶がないから…きっと私が作り出したあなたの姿だったのかもしれない…」


ジョーは右手をポケットに入れるとあるものを取り出し、フランソワーズの目の前に手を開いて見せた。


「え…?」

ジョーの手のひらには桜の花
まだ綺麗なままで…

「記憶はない、でも何かは起こっていたのかもしれないね」


強い意志
信じる気持ち
きっと帰って来る
それだけを日々願っていた。


フランソワーズの目から涙が流れる。


ジョーは身をかがむと、座っているフランソワーズにキスをした。


「約束」

にっこりと笑う。

フランソワーズも泣きながら笑う。


ジョーはフランソワーズの涙を指で優しく撫でる。

「これからも…ずっと約束」

ガラスに手をついてフランソワーズの動きを封じる。

フランソワーズはジョーの両腕に動きを塞がれたまま、目を閉じた。


〜おしまい〜



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