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横になっていろと言われても気になって仕方ない。
ベッドから起き上がると、リビングに向かう。
リビングの先にある小さなキッチンでフランソワーズが後ろ向きで料理を作っている。
トントンと軽快な包丁の音と、昔聞いたようなフランソワーズの鼻歌が、故郷のキッチンを思い出させる。
どことなく楽しげに料理を作っているフランソワーズの後姿。
こんな贅沢って…。
あ…。
フィリップはある事を思い出す。
「あの~、フランソワーズさん?」
「なぁに?」
振り返った彼女にどきっとする。
「ジョー…さん待っているんじゃ?」
「え?」
え?って。
「ジョーはアメリカだけど」
あ!め!り!か!
「どうしたの?」
「いや…何も」
そうか、アメリカか!それじゃあすぐに飛んで帰ってこれないわけだ。
「出来たわ、フィリップさんの故郷の味と同じかどうかわからないけれど、私の母が作ってくれていたスープよ」
冴子さんのお粥ももちろん美味しかったが、やはり故郷のフランスの味が恋しい事がある。
「旨い…」
「…故郷を離れたった一人で頑張っているフィリップさんは偉いと思うわ」
そうだよね…。
フィリップはフランソワーズをじっと見つめる。
彼女が自分に抱いている感情は「同情」なんだ。
でも故郷が同じという事は共有できる部分もあるわけだ。
ふっとあの日本人が浮かんだ。
「僕の故郷の味と同じだよ、母が作ってくれたスープと同じ。」
「ジョーはお粥がいいっていうのよ、やっぱり弱った時はその故郷の味がいいのかしらね?」
そうだ!そうだ!聞こえるか?あの日本人よ!僕とフランソワーズさんの故郷の味は同じんだぞ!!
「さ、スープ飲んだら、お薬を飲んで、眠って」
今薬を飲んで、眠ってしまったらきっとフランソワーズさんは帰ってしまうんだろうな。
でも早く治さないと。
残念だけと休むことにした。
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