5
翌朝
宮殿に向かうと、そこに王女の姿があった。
過去に出会った時は、まだ王女ではなかった。
今は王女としての貫禄も備えながら、相変わらずの美貌に、マスコミからも注目されていた。
積極的な外交もキャサリンを目立たせるには充分だった。
キャサリンはジョーを見て、目を潤ませる。
ジョーは見て見ぬふりをして、淡々と今日の計画の話を進める。
フランソワーズはジョーから離れた所にいた。
気づかれたら、ピュンマの国の損失に関わるかもしれない。
今夜だけ我慢すればいいの。
今夜だけ。
俯いているフランソワーズを、アルベルトとグレートが黙って見ていた。
ホテルの部屋で着替えるジョーを、フランソワーズはぼんやり眺めていた。
鏡の前で蝶ネクタイを動かしている。
「…素敵よ」
「ん?何か言った?」
「何にもないわ」
フランソワーズは正装する必要がないから、着替えずにベッドに横になる。
「…寝るの?」
ジョーがベッドサイドに腰を下ろす。伏せて寝たふりをするフランソワーズの髪を撫でる。
「女王陛下は、あなたの事をあの頃と同じ眼で見ていたわ」
まくらに顔を埋めたまま、フランソワーズが呟く。
髪を撫でる手が止まる。
「まさか、あれから何年経ったと思ってるの?」
「何年経ったって、人の気持ちは変わらないものよ…」
フランソワーズはあの日を思い出す。
次々と襲ってくる刺客。
心が疲れたジョーの前に現れた女性。
彼女もまた度重なる公務に疲れていた。
普通の男として
普通の女性として
お互いの気持ちがリンクした。
フランソワーズは伏せていた顔を上げる。
ジョーは黙ってフランソワーズの頬を撫でるとキスをした。
「出かける時間になったら呼ぶから、少し休んだほうがいい。
もう少しピュンマ達と打ち合わせしてくるから」
ジョーはもう一度キスをして、部屋を出て行った。
フランソワーズはシーツに包まり涙を流す。
過去に締め付けられている感じがした。
苦しい…。
PR