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キャサリンが晩餐会会場から、バルコニーに移動した。
少し離れてジョーが追う。
ジョーがバルコニーに来たのを感じたキャサリンが振り返る。
「どうか…なさいましたか?」
「あなたと話がしたかったのです」
キャサリンは艶やかな笑みを浮かべる。
「あなたに…逢いたかった…」
ジョーは目を背ける。
「あの時は…あなたが王女とは知らず、ご無礼を…」
「私こそ、身分を隠していたのですから…あなたに出逢えて、王族の人間でなく普通の女として、あなたを愛する事が出来た…とても幸せでした。」
ジョーは黙って夜景を眺めていた。
「あなたにこの国の…いえ、私のボディーガードになって頂きたく、この仕事を持ちかけたのです」
「…。」
「ここなら一生生活に不自由しない事でしょう、何ならあなた方の施設をここに移しても構いません。秘密は厳守します。
イチ科学者の開発だけでは、あなた方の維持費を賄うのは大変かと。」
「脅迫に…聞こえますが…」
「あら、人聞きの悪い、私だって一国の長ですのよ、もちろんビジネスの提案もさせていただきますが、それにここからなら…フランスに近い…」
「??何故…そこまで?」
フランソワーズには2人がバルコニーに出ているのは見えていた。
並ぶ姿は想像した通りだ。
王族にも対等なスタイルのジョーに胸が痛む。
キャサリンの表情まで見て取れる。
目を潤ませ愛おしそうにジョーを見上げる。
女だからわかる。
わかるから…辛い。
耳からは2人の会話が流れてくる。
王族としてではない、普通の女としてあなたを愛せた…。
耳を塞いでも流れてくる。
「もう、やめて、もう聞きたくないの…」
フランソワーズはその場にうずくまった。
ジョーは夜景を眺めながら口を開く。
「起こってしまった過去は変える事が出来ません。確かにあの時、僕とあなたの心は同じだった。」
キャサリンはジョーの身体が自分の方に向いた瞬間、胸に飛び込んだ。
「でも、あれから時間は流れている。過去は過去として、胸の奥に閉まっておいた方がいいと…今は思う…」
ジョーは自分を抱き締める気がないとわかると、そっと離れる。
「あなたへの想いを忘れろ…と?」
「僕は今の生活が大切だ。あの頃の自分とは違う。」
「では、なぜ?私の仕事を引き受けたのですか?」
「ムアンバの将来がかかっていたから。あの国は僕にとっても希望なんです。」
「そう…」
キャサリンはバルコニーに手をかける。
「ムアンバ共和国との取引は、我が国にとっても有益です。これから親交を深めながら共に発展していきたい…と思っています。」
「お願いします」
ジョーがニコッと笑う。
キャサリンの胸がきゅんとなる。
思わず背伸びをして、ジョーにキスをする。「??」
驚いた顔をしたジョーにクスッと笑い
「これくらいならいいでしょ?」とイタズラした子供のように笑った。
「さあ、そろそろ戻りましょう。僕が独り占めしているわけにはいきません」
2人は会場に戻る。
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