「フランソワーズさん、落ち着いて!一体何があったのですか?」
フィリップは興奮気味のフランソワーズを落ち着かせようと、近くから椅子を持って来て座らせる。
水の入ったコップを渡す。
フランソワーズは勢いよく水を飲むと、深呼吸をした。
「ごめんなさい、つい取り乱してしまって…」
「何か事件でも?」
「話すと長い事になるから、ついて来て欲しいの。話はそれからで…」
研究所の地下は駐車場になっている。
フィリップの愛車の隣にあったのはジョーの車。
そっか、奴も来ていた訳か。
自分を頼ってくれたフランソワーズに一瞬でも期待していた自分自身に失笑する。
車には誰もいなかった。
フランソワーズは運転席に乗り込む。
「あれ?これジョーさんの車ですよね?ジョーさんはいないんですか?」
フィリップの質問に、 フランソワーズの顔色が一瞬変わったような気がしたが、きっと駐車場の明かりのせいだろう。
「それも後で話すから、とりあえず乗って!」
「あ、はい」
今何を聞いても説明する気がないと気づいたフィリップは、黙った。
海の蒼と空の青が交わりそうで交わらない景色を車窓からぼんやり眺めていた。
夢だったフランソワーズとのドライブが呆気なく叶ったが、自分は助手席で、運転は怖い顔したままのフランソワーズで、車内は無言で、車は…あいつの物だ。
車内でフランソワーズが発した言葉は
「これから見るもの、聞いたものは他人に言わないようお願いします。」
だけだった。
フィリップはこれからとんでもない事に巻きこまれるのだけは理解でき、覚悟を決めるしかなかった。
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