「綺麗!!」
ビルの隙間にぽっかりと開いた空き地の一角。
大きな桜の木が今満開を迎えていた。
「見事ね」
桜並木はよく見ていたが、一本の樹でこれだけの花をつけている。
見事…という言葉しか出なかった。
「ここは…私とナツの思い出の場所なんです。」
「ナツは桜が好きでした。そしてここでプロポーズされました」
自分より幼い印象のミチが俯く。
その時の事を思い出しているのだろう。
「彼は両親を早くに亡くし、兄弟もいなかった。家庭に憧れていたんです。」
フランソワーズの胸がズキンと痛む。
「彼が大学を卒業する時に結婚しよう…と。2人で暖かい家庭を作ろう…って…なのに…半年前に交通事故に遭い、行方不明になってしまったの…」
ミチは大きな桜の幹に近づく。
「事故の衝撃で身体が車外に投げ出され、側を流れていた川に落ちた…と警察は言っていたけれど、彼は何処かで生きていると信じていたら…目撃情報が」
「それであそこにいたのね」
「彼は何らかの事件に巻き込まれていて、私の元に戻ってこれないんです。
だから見つけてあげないと…」
フランソワーズは人の気配に目を凝らす。
桜の影に男の人の影を見つけた。
その姿がよく見える位置に来たときに、ミチが叫んだ。
「ナツ?!」
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